LLMはさまざまな能力が高いものの、事実情報を把握・活用するのがまだ苦手と考えられています。そこで注目されているのがナレッジグラフ(知識グラフ)との連携です。
研究者らは、「ナレッジグラフを活用したLLM」「LLMを活用したナレッジグラフ」そして「両者の相互連携」についてロードマップを提示しています。
参照論文情報
- タイトル:Unifying Large Language Models and Knowledge Graphs: A Roadmap
- 著者:Shirui Pan, Linhao Luo, Yufei Wang, Chen Chen, Jiapu Wang, Xindong Wu
- 所属:Griffith University, Monash University, Nanyang Technological University, Beijing University of Technology, Hefei University of Technology, Zhejiang Lab(※全員がIEEEフェロー)
背景
ナレッジグラフとは
ナレッジグラフは、ある特定の事実が整理された大きなデータベースです。事実関係が(主語, 述語, 目的語)のトリプレットという形式で構造化されているのが一般的な形式です。既存のナレッジグラフは、保存されている情報に基づいて4つのグループに分類されます。
- 百科事典型:一般的な知識を網羅。代表例は Wikidataなど。
- 常識型:日常的な常識や判断に必要な知識をもつ。
- 特定分野型:特定分野に関する専門的な知識をもつ。
- 複合型:テキスト, 画像, 音声など複数の形式の情報を統合する。
LLMとナレッジグラフの長所短所
今回研究者らは、LLMとナレッジグラフを合わせて使用すると相互に補完できる関係になると述べています。
LLMの長所は、大規模なコーパス学習により、質問応答、機械翻訳、テキスト生成など様々な自然言語処理タスクで優れた性能を発揮するという点です。
一方で、LLMには次のような短所があります。
まず、事実知識が不足しており、学習データからの丸暗記に頼ることがあります。またブラックボックスモデルゆえに解釈可能性が低いという点もあります。さらに、特定分野の知識や新しい学習データに弱いという特徴もあります。
次に、ナレッジグラフには次の長所があります。ナレッジグラフはトリプレット形式で事実に基づいた情報を構造化して保存しています。また専門家が特定分野の知識グラフを構築することにより、正確で信頼できる情報を提供できます。
ただしナレッジグラフには次の短所があると考えられています。
ナレッジグラフは構築が難しく、不完全で常に変化する実世界の知識を適切に扱うことができません。テキスト情報を十分に活用できないケースもあります。また特定のデータやタスクに合わせた方法が多く、汎用性に欠けます。
上記のようにそれぞれの特徴をもつLLMとナレッジグラフを連携させることには幾つかのメリットがあります。たとえば推論や解釈可能性を向上できること、LLM を活用してナレッジグラフのタスクを改善できることなどが考えられます。
そこで研究者らは、LLMとナレッジグラフをどのように統合すればいいのか、ロードマップを作成しました。
ロードマップ
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