この記事では、大規模な職務分析を紹介します。

生成AIの普及によって「多くの仕事が奪われるのではないか」という不安の声が高まっていますが、そのような見方に一石を投じる内容となっています。

背景

生成AIの広がりで、「多くの仕事がAIに置き換わるのでは？」という予測が次々と出ています。中でもよく知られているのは、「職種の半分以上がAIの影響を受ける」という試算です。多くの分析は、アメリカ労働省の職業データベース「O*NET」を元にしています。そこには職種ごとのスキルや仕事内容が整理されていて、AIの能力と照らし合わせて影響度を評価するわけです。

でも、このやり方には限界があります。同じ職種名でも、実際の仕事は人や組織によって違うのに、それをひとまとめにしてしまうのです。たとえば「エコノミスト」という職種が一つの業務内容だけで定義されていて、政府で働く人も、企業で働く人も、同じ仕事をしていることになってしまいます。

もう一つの問題は、「AIが得意＝その仕事はなくなる」という思い込み。現実には、職種全体が消えるのではなく、AIが一部の業務を担当し、人は別の仕事に集中するというケースが多くなりそうです。

ここでカギになるのが「仕事の再設計（ジョブ・リデザイン）」です。たとえば、ある人が週の3割の時間をデータ入力に使っているとします。それをAIが代わりにやってくれたら、空いた時間を人にしかできない業務に回せるかもしれません。この「空いた時間をどう使うか」が、生産性を左右します。

今大事なのは「どの仕事がなくなるか」ではなく、「どんな作業をAIが担当できて、人は何に時間を使えばいいか」という視点です。

今回の記事では、実際の求人からタスクを拾い出して、AIがどこまでできるのかを細かく分析した事例を取り上げます。AI導入後にどんな働き方が理想的かまで扱います。