本記事では、Salesforceの最新決算資料をもとに、同社のAI戦略や採用動向を分析し、AI分野でキャリアを築くためのヒントを探ります。読者の皆様が、最新の市場動向を正確に把握し、戦略的にキャリア形成を進めるための一助となれば幸いです。なお、企業の決算資料をベースにして記事をお届けする本コラムシリーズ企画はAIDB HRの紹介を兼ねています。参考になった際には、ぜひサービスページにも足を運んでいただけると幸いです。
AI技術の進化は、ビジネスの在り方を変えつつあります。その中で、Salesforceは顧客関係管理(CRM)分野でのリーダーとして、AIを活用した業務革新を進めています。
2025年度第4四半期の決算では、売上高が100億ドルに達し、前年同期比で8%の増加を記録しました。通期では、売上高が379億ドル、営業キャッシュフローが131億ドルと、いずれも前年を上回る成長を示しています。
とくに注目すべきは、同社が提供する「Agentforce」プラットフォームです。これは、企業が自律的なAIエージェントを構築・展開するための基盤であり、営業、カスタマーサービス、マーケティング、コマースなど多様な分野で活用されています。Agentforceは、Salesforceのデータ基盤である「Data Cloud」と連携し、リアルタイムでのデータ活用を可能にしています。
参照情報:Salesforce, Inc. Q4 FY25 決算発表ページほか
企業概要とAI関連事業
企業概要
Salesforceは1999年に設立され、クラウドベースの顧客関係管理(CRM)ソリューションを提供する企業として、業界をリードしています。同社は、Sales Cloud、Service Cloud、Marketing Cloud、Commerce Cloud、Data Cloudなど、多岐にわたる製品群を展開し、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援しています。本社はサンフランシスコにあり、ニューヨーク証券取引所に「CRM」のティッカーシンボルで上場しています。
AI関連事業の展開
Salesforceは、AI技術を活用して企業の業務効率化と顧客体験の向上を目指しています。その中心となるのが、AgentforceとEinsteinの2つのプラットフォームです。
Agentforce
Agentforceは、企業が自律的なAIエージェントを構築・展開できるプラットフォームで、2024年10月に一般提供が開始されました。このプラットフォームは、Salesforceの既存の製品群と統合されており、営業、サービス、マーケティング、コマースなどの分野で活用されています。Agentforceの中核には、Atlas Reasoning Engineがあり、自然言語処理や機械学習を活用して、複雑な業務プロセスの自動化を実現しています。Atlas Reasoning Engineの詳細については、こちらの公式ページをご参照ください。
Einstein
Einsteinは、SalesforceのCRMプラットフォームに組み込まれたAI機能群で、予測分析やパーソナライズを支援します。このプラットフォームは、毎週1兆件以上の予測を生成し、セールス、カスタマーサービス、マーケティング、コマース分野での意思決定を支えています。また、Einstein Trust Layerをはじめとするガードレール機能により、データ保護やコンプライアンスを維持しつつ、高速な予測サービスを提供しています。Einstein Trust Layerの詳細については、こちらの公式ページをご参照ください。
市場動向と企業のポジション
業績のハイライト
Salesforceは2025年度第3四半期(Q3 FY25)に、売上高94億4,000万ドルを記録しました。これは前年同期比で8%の成長にあたります。営業利益率はGAAPベースで20.0%、Non-GAAPベースで33.1%となり、いずれも前年から改善が見られました。一株当たり利益(EPS)も、GAAPベースで1.58ドル、Non-GAAPベースで2.41ドルと、どちらも二桁成長を維持しています。

キャッシュフローの面でも好調が続いています。営業キャッシュフローは20億ドル、フリーキャッシュフローは約17億8,000万ドルに達し、前年同期比でそれぞれ29%増、30%増という力強い伸びを示しました。また、将来の売上基盤となる「現在残存パフォーマンス義務(cRPO)」も264億ドルに拡大し、前年同期比10%の成長を記録しています。
経営陣の視点
会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏は、AgentforceがSalesforceプラットフォームに統合され、24時間365日、自律的なデータ分析と意思決定を可能にしている点を強調しました。最新四半期では、1週間に200件以上の商談を生み出すなど、AIによる業務変革が具体的な成果を上げていると述べています。
社長兼CFOのエイミー・ウィーバー氏は、営業利益率の改善とキャッシュフローの拡大を挙げ、収益性とコスト効率が大きく向上している点を評価しました。さらに、2,000万ドルを超える株主還元も実施し、財務の健全性をアピールしています。
社長兼COOのブライアン・ミルハム氏は、AI関連の大型商談が前年同期比で3倍以上に増加したことに触れました。1,000万ドルを超える規模のAI案件が2,000件以上成立しており、AgentforceとData Cloudの連携がビジネス成長を確実に後押ししていると説明しています。
これらの実績と経営陣の発言からは、Salesforceが堅実な成長を続けると同時に、Agentforceを中心としたAI戦略が今後の事業拡大の要になっている様子がうかがえます。
求められる人材像とスキルセット
クラウドコンピューティングのスキル
Salesforceのようなクラウドを基盤とする企業で活躍するには、AI技術やクラウド環境に関する幅広い理解があると心強いでしょう。とくに、機械学習、深層学習、自然言語処理(NLP)、画像認識といった分野について、理論と実践の両面から経験を積んでいると、仕事の幅が広がりそうです。こうした技術をSalesforce Einsteinのような専用AIプラットフォームや、最新のAIエージェントプラットフォームで応用できるかどうかも、これからの現場では意識されるポイントになりそうです。
また、AWS、Azure、Google Cloud Platform(GCP)といった主要なクラウドサービスに触れた経験は、システムの拡張性やセキュリティ、運用管理を考えるうえでも大きな助けになります。さらに、マイクロサービスアーキテクチャやコンテナ技術、API連携など、クラウドネイティブな開発手法を身につけておくと、プロジェクトに貢献できる場面がより広がるでしょう。
ビジネスのスキル
技術に強いだけでは、AIの導入を現場で根付かせるのは難しい場合もあります。実際の業務プロセスを理解し、そこにAIをうまく組み込んでいくビジネススキルも、これからますます重視されそうです。たとえばセールス、カスタマーサービス、マーケティングといった部門の業務内容を理解し、AIエージェントによる自動化や対話型システムの導入によって、業務の効率化や顧客体験の向上をサポートできると、企業全体の競争力にもつながっていきます。
あわせて、データ分析のスキルや、機械学習モデルの構築・改善に携わる力も、得られたデータからビジネスインサイトを導き出すうえで大切な素養となるでしょう。技術的な内容を分かりやすく伝えるコミュニケーション力や、AI倫理やプライバシー保護に対する意識も、現代のビジネス環境では欠かせない視点です。
さらに、絶えず変化する技術に対応できるよう、学び続ける姿勢も重要になってきます。たとえば、TensorFlow Developer CertificateやAWS Certified Machine Learning – Specialtyといった国際的な資格取得に挑戦することで、スキルの裏付けとなり、自信にもつながるかもしれません。
キャリアアップ/採用の視点
人材向け
デジタルトランスフォーメーションが進むなかで、Agentforceのような統合型AIプラットフォームは、企業の業務改善や顧客対応の自動化に大きな役割を果たし始めています。これにともない、AIエンジニア、データサイエンティスト、AIコンサルタント、AIプロジェクトマネージャーといった多様なキャリアパスが広がり、実践的なスキルをビジネス課題の解決に活かせる機会が増えています。
企業側が求めるのは、単なる技術力にとどまらず、業務全体を俯瞰しながら、戦略的に課題解決へと導ける人材です。急速に進化するAI技術に柔軟に対応しながら、常に新しい知識を取り入れていく姿勢も、これからますます大切になっていくでしょう。
採用担当者向け
Agentforceのような統合型AIプラットフォームの普及は、Salesforceに限らず、さまざまな企業で採用方針の見直しを促しています。採用担当者には、AIに関連する知識やスキル、実務経験を持つ人材を、より明確な要件として設定する動きが求められています。
選考においては、技術スキルだけでなく、問題解決能力やコミュニケーション力、チームワークを総合的に評価する視点が重要になります。とくにAI人材の需要は年々高まっており、優秀な人材を巡る競争も激しくなっています。この状況を踏まえ、企業側もトレーニングや認定プログラムを積極的に活用し、内部育成と外部採用の両面から体制を整えていくことが求められる場面が増えてきました。
こうした背景をふまえると、AgentforceをはじめとするAIプラットフォームを活用する企業にとって、AI人材のキャリア形成と採用戦略は、今後ますます競争力を左右する大きなカギになりそうです。
まとめ
AgentforceやData Cloudといった統合型プラットフォームは、企業における業務の在り方を着実に変え始めています。市場では、AI技術の進化にともない、柔軟に対応できる人材へのニーズも高まり続けています。単なる技術スキルだけではなく、業務全体を理解し、AIを戦略的に活かせる視点を持った人材が、これからますます求められていくでしょう。
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