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---以下、記事本文---

AIは、人間の「意見」も予測できる? ほか、週末読みたいAI科学ニュース

   

本企画では、AIDBのX (旧Twitter) で紹介された最新AI研究を、週刊ダイジェスト形式でお届けします。

普段の有料会員向け記事では、技術的な切り口から研究を詳しく紹介していますが、この企画では科学的な知識として楽しめるよう、テーマの概要をわかりやすくお伝えします。

今週は、人の考え方やふるまいにAIがどこまで迫れるのかをどこまで近づけるのかに注目した、4本の研究をご紹介します。

価値観の連動性を読み取るモデル、視線の動きの処理手法、人間との違いが曖昧になるテスト結果、そしてネガティブ思考への介入と、いずれも人間の内面や行動をAIがどのように理解・再現できるかに注目した内容です。

研究に対する反応が気になる方は、ぜひAIDBのXアカウント (@ai_database)で紹介ポストもご覧ください。中には多くの引用やコメントが寄せられた話題もあります。

AIは“別の話題の意見”も予測できる?

LLMは、人の考え方のパターンを読み取り、別の話題にも応用できることがわかってきました。たとえば、環境問題への意見を入力すると、公共の安全に対する考え方まで予測できるケースがあるそうです。宗教や伝統、政治など、価値観どうしのつながりも反映されやすいことが報告されています。

さらに、こうした推論は、少ない情報からでも可能であると報告されています。GPT-4oであれば、3つほどの意見例があれば十分に“その人らしい考え”を推測できるとのこと。今後は、価値観に基づくパーソナライズや対話設計への応用が期待される一方で、本人が語っていないことまで“予測”してしまう点には注意が必要です。

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参考文献

Can Large Language Models Predict Associations Among Human Attitudes?

https://doi.org/10.48550/arXiv.2503.21011…

Ana Ma, Derek Powell

Arizona State University

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AIが人間と区別できなくなる瞬間

OpenAIが提供する言語モデルGPT-4.5が、人と会話しても見分けがつかないかを判定するチューリングテストに合格したと報告されました。カリフォルニア大学の研究チームが行った実験では、人間とAIの両方と会話した審査員が、73%の確率でGPT-4.5を「人間」だと判断したとのことです。

これは、GPT-4.5が人間より人間らしく振る舞えていた可能性を示します。チューリングテストを高いスコアで通過したAIは、今回が初の例とされています。

比較対象となったGPT-4oのスコアは21%にとどまり、性能差も明確でした。興味深いのは、最も人間らしく見えたのが「若くて内向的でネット文化に詳しい人物」として振る舞ったときだった点です。別のモデルLLaMa-3.1でも、同様の振る舞い設定により56%という高いスコアが記録されています。

チューリングテストは、審査員が人とAIの両方と会話し、どちらが人間かを見極められるかを試す方法です。今回の結果は、人間らしさの再現において、AIが新たなステージに到達しつつあることを示しています。

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参考文献

Large Language Models Pass the Turing Test

https://doi.org/10.48550/arXiv.2503.23674…

Cameron R. Jones, Benjamin K. Bergen

UC San Diego

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視線データを言語化してAIに学ばせる方法

人がどこを見ているか、目がどう動くかといった「視線の動き」を、AIがうまく扱える形に変換する方法が研究されました。この視線データをAIに読み込ませることで、将来的にはユーザーの行動予測や、操作画面の改善、心の状態の変化をとらえるといった活用が期待されています。

今回の研究では、複数の変換手法を比較し、視線の動きをAIにどう伝えるかが検討されました。中でもある方法は、視線の位置や動きを高い精度で予測できることが示されました。

こうした手法は、AIの学習データとして組み込むことも、すでにあるAIに視線情報を追加で入力することも可能です。人の「目の動き」が、AIにとっての新しいヒントになる時代が近づいているのかもしれません。

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参考文献

Tokenization of Gaze Data

https://doi.org/10.48550/arXiv.2503.22145…

Tim Rolff, Jurik Karimian, Niklas Hypki, Susanne Schmidt, Markus Lappe, Frank Steinicke

University of Hamburg, University of Münster, Canterbury University

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AIにネガティブ思考を前向きに導かせる方法

ハーバード大学とMITの研究チームは、AIにネガティブな思考に気づかせたり、それを前向きに変えるよう導くための手法を検証しました。その結果、「推論力をあらかじめ学習させた高性能モデル(例:o1)」よりも、「GPT-3.5のような汎用モデルに“推論的な問いかけ”を加えた構成」の方が、認識精度や対応の質で上回ることが分かりました。

たとえば、ネガティブな感情を見つけ出すタスクでは、GPT-3.5に推論プロンプトを与えた場合の精度は96%。一方、o1のような高度な推論モデル単体では56%にとどまりました。これは、モデル自体の性能だけでなく、「どんなふうに問いかけるか」がAIの思考支援において非常に重要であることを示唆しています。

今回の結果は、感情ケアのタスクだけでなく、他の分野でも同様の傾向が出る可能性があると考えられており、「高性能なモデルに頼るよりも、汎用モデルに適切な考え方のフレームを与える方がうまくいく」場面は、今後さらに増えるかもしれません。

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参考文献

Does “Reasoning” with Large Language Models Improve Recognizing, Generating, and Reframing Unhelpful Thoughts?

https://doi.org/10.48550/arXiv.2504.00163…

Yilin Qi, Dong Won Lee, Cynthia Breazeal, Hae Won Park

Harvard University, MIT

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まとめ

AIと人間の境界を探る挑戦は、日々新しい発見を生み出していますね。

週末ダイジェストでは、こうした最前線の科学的な話題を、わかりやすくお届けしています。
来週も、最新のAI研究から世界の変化を一緒に見つめていきましょう。

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