次回の更新記事:事例ベース推論を組み込んだLLMエージェントの設計と…(公開予定日:2025年04月24日)

Metaの最新決算から読み解くAI事業戦略と求められる人材像

   

最終更新日:2025/04/05

本記事は、AI業界の最新動向に関心を持つ方々や、キャリア形成や転職を検討するAI人材、そしてAI人材の採用を目指す企業の採用担当者を対象とした、経済調査チームによるコラムシリーズです。

今回はMetaに焦点を当て、同社がソーシャルメディア企業の枠を超え、AIやVR/ARなどの最先端技術を駆使した総合テック企業へと変貌を遂げつつある現状を解説します。中でも、主力事業であるReality Labs(RL)やコアAI技術(代表例としてLlamaモデル)について詳述するとともに、最新の財務状況や研究開発投資を踏まえながら、Metaの事業戦略や今後の展望を明らかにします。さらに、2025年の具体的な事業展開にも触れ、同社の将来的な方向性について予測を示します。

AIDBは普段の論文解説記事において主に科学技術の進展を研究ベースで取り扱っていますが、本コラムシリーズでは経済調査チームが、そうした技術が実際の経済価値へと転換するプロセスを企業事例を通じて追跡します。

Metaがソーシャルメディアから総合テック企業へとシフトしている背景には、市場の成熟化に伴う成長鈍化への対応、そしてAIやVR/AR分野など新しい成長領域への戦略的進出があります。こうした新技術を活用した次世代プラットフォームの構築を積極的に進めることで、Metaは企業価値のさらなる長期的な向上を狙っています。このような事業ポートフォリオの多様化は、Metaが今後も成長を維持していく上で不可欠な戦略的要素となっています。

本記事の参照資料:

Meta Reports Fourth Quarter and Full Year 2024 Results
https://investor.atmeta.com/investor-news/press-release-details/2025/Meta-Reports-Fourth-Quarter-and-Full-Year-2024-Results/default.aspx
Meta Earnings PresentationQ4 2024
https://s21.q4cdn.com/399680738/files/doc_financials/2024/q4/Earnings-Presentation-Q4-2024.pdf

MetaがAIを活かしているフィールド

まずは、Metaの主要事業である「Family of Apps(FoA)」と「Reality Labs(RL)」の概要や主力サービスについてご紹介します。両セグメントの連携や将来的な展望についても、私見を交えながら解説します。

1. Family of Apps(FoA)

「Family of Apps(FoA)」は、Metaが展開するソーシャルメディアやメッセージングサービスを統合した事業セグメントです。具体的には、Facebook、Instagram、Messenger、WhatsAppなど、多くの人が日常的に利用するサービスが含まれます。

最近ではMessengerやWhatsAppを通じた「ビジネスメッセージング」も積極的に推進しており、企業とユーザーがコミュニケーションを取る新しい販路として注目されています。こうした取り組みは、ユーザーにとって利便性を向上させるだけでなく、企業にとっても新たな顧客接点として収益機会を広げる可能性があります。

日常に溶け込むコミュニケーション基盤と位置付けられています。

2. Reality Labs(RL)

Metaのもう一つの重要な事業セグメント「Reality Labs(RL)」は、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)といった先端技術に特化しています。

代表的な製品である「Meta Questシリーズ」は、すでにゲームやエンターテインメント分野にとどまらず、遠隔会議やバーチャルトレーニングなど、ビジネス用途としても市場を拡大しています。さらにRay-Banと共同開発したARグラスが登場したことで、AR技術がより日常的に使われる時代が近づいていると感じます。

3. すべてをつなぐMetaの「コアAI技術」

Family of AppsとReality Labsの事業をつなぎ、新たな価値を創出するためには、Metaが持つ「コアAI技術」が不可欠です。両セグメントの連携を支えるAIの最新研究や開発動向に注目しながら、Metaが今後どのようなイノベーションを進めようとしているのかを探っていきます。

コアAI技術の詳細

MetaはAI分野において、大規模なAIモデルとそれを最適に活用するハードウェア開発の両面から、革新的な技術戦略を推進しています。

Llama 3 高性能な大規模言語モデル

Metaの主力AIモデルである「Llama 3」は、標準的なDense Transformerアーキテクチャをベースに開発されています。モデルサイズは、80億、700億、4050億パラメータの3種類で提供されており、「Grouped Query Attention」や「RoPE埋め込み技術」を導入することで、推論速度や長文コンテキストの処理性能を大幅に向上させました。

また、約15兆トークンという膨大なデータを活用した学習により、一般知識から数学、プログラミング、多言語対応まで幅広い分野で高い理解能力を備えています。さらに、高精度なフィルタリング技術を活用し、個人情報や有害コンテンツなどの不要な情報を適切に排除する仕組みも整備されています。

Llama 4 次世代マルチモーダルAIへの進化

次世代モデルである「Llama 4」は、Llama 3からさらに大きく進化し、オープンソースコミュニティを牽引する新たな標準となることが期待されています。

Llama 4では、テキスト以外の画像や音声にも対応する「マルチモーダル」機能や、特定の指示だけにとどまらず、自律的に状況判断をしながらタスクを実行する「エージェント機能」が搭載されます。このことにより、柔軟な推論能力や高度な判断力を持つAIへと発展していきます。また、ミニモデルから大規模モデルまで、段階的に複数の構成で提供される予定です。

Llama 3とLlama 4の比較表

また、MetaはAIワークロードに特化したカスタムシリコン「MTIA(Meta Training and Inference Accelerator)」の開発にも注力しています。MTIAは、従来の汎用チップでは実現しにくい高い効率とパフォーマンスを提供するため、メモリ、ネットワーク帯域、計算能力などをMeta独自の要求に合わせて最適化。これにより、生成AIなどの将来的なユースケースにも柔軟に対応し、技術革新と事業成長の加速に寄与する戦略の中核となっています。

最新の財務状況と研究開発(R&D)投資

Metaは、2024年第4四半期において、売上高483.85億ドル、営業利益233.65億ドル、純利益208.38億ドル、EPS 8.02ドルを記録しました。特に広告収益は467.83億ドルと好調であり、通期(2024年度)でも売上高1645.01億ドル、営業利益693.80億ドル、純利益623.60億ドル、EPS 23.86ドルと、大幅な成長を示しています​。

こうした業績を背景に、Metaは今後の成長を支えるAIインフラの強化を目的として、データセンターの拡張や、独自に開発したAI専用のカスタムシリコン「MTIA」、大規模言語モデル「Llama」シリーズへの投資を継続的に行っています。新規データセンターの整備やMTIAの導入により、従来のGPUベースのサーバーを部分的に置き換え、AIトレーニングおよび推論環境の効率化を進めることで、性能向上と運用コストの削減を同時に実現しています。

経営陣が描くMetaの未来戦略 2025年のAI活用と事業展望

マーク・ザッカーバーグCEO”「AIの転換期」への挑戦”

Metaのマーク・ザッカーバーグCEOは、2025年を「AIの転換期」と位置付けています。同CEOは、次世代大規模言語モデル「Llama 4」をMetaのAI戦略の中核に据え、このモデルが10億人以上のユーザーが利用する基盤技術になることを目指しています。この目標を達成するため、MetaはAIインフラ整備やAI人材の採用に、総額600億〜650億ドルという大規模な投資を計画しています。

また、Metaはハードウェア分野においても革新を加速しています。レイバンとの共同開発によって生まれた「Ray-Ban Meta AIグラス」は、音声アシスタント「Meta AI」を搭載し、現実世界の映像をリアルタイムに解析し、ユーザーからの質問に応えるという新しいコミュニケーション体験を提供します。このデバイスの登場は、現実とバーチャル世界の境界を曖昧にし、人々の情報取得やコミュニケーションのあり方を一変させる可能性があります。

スーザン・リーCFO”収益拡大とコスト効率化を両立するAI戦略”

一方、Metaのスーザン・リーCFOは、AI技術への投資が収益拡大とコスト効率化の両面で非常に重要であると述べています。同CFOは、短期的にAIへの投資増加に伴うコストの増加は避けられないものの、長期的には広告配信の精度向上や業務の自動化による生産性改善が企業全体の持続的成長に大きく寄与すると強調しています。

実際、Metaの広告事業では、AIによるターゲティング精度の向上が進み、広告のインプレッション単価の上昇がすでに確認されています。これが広告収益の増加につながるなど、AI投資が具体的な成果をもたらし始めています。

市場評価と今後の課題 競合と比較したMetaの強みとは?

近年のAI技術の急速な進歩を背景に、AI市場の競争はますます激化しています。Metaはこうした競争環境の中、オープンソースとクローズドという二つのアプローチを併用することで、市場での優位性を確立しようとしています。本章では、オープンソースAIモデルの台頭、特にDeepSeekとの比較や、OpenAIのChatGPTのようなクローズドモデルとの違いを通じて、Metaの強みや課題を明らかにしていきます。

オープンソースAIモデルの台頭とDeepSeekとの比較

AI業界では、中国発のオープンソースAIモデル「DeepSeek」がコスト効率性や柔軟な運用を強みに急速に存在感を高めており、Metaの大規模言語モデル「Llama」と直接競合しています。この状況下でMetaは、「Llama」のオープンソース化を進め、世界中の開発者コミュニティから得られるフィードバックを活用することで、技術向上と利用コストの低減を目指しています。また、関連する半導体メーカーやAI開発プラットフォームとも連携し、システム全体の最適化を図る戦略を取っています。

さらにMetaは、「Llama」のオープンソース化を通じて米国発のAI技術標準を世界的に普及させるという狙いも持っており、産業全体の競争力強化を目指しています。

クローズドモデルとの比較 ChatGPTとの違いから見るMeta AIの戦略

一方、クローズドモデルの代表格であるOpenAIの「ChatGPT」は、安定した品質と高いセキュリティ性能を提供し、市場での評価を得ています。それに対し、Metaのアプローチは、ユーザー一人ひとりのコンテキストや関心に基づいた、よりパーソナライズされたAIアシスタントの開発に重点を置いています。Metaが目指すのは、単なる汎用AIではなく、それぞれの利用シーンに最適化された柔軟なAIエージェントです。

具体的には、Metaは問題解決能力やコーディングスキルを備えた高度なAIエージェントの開発に取り組んでおり、これを自社製品やサービスの品質向上に生かす計画です。さらに、次世代モデル「Llama 4」では、テキストのみならず画像や音声も扱えるマルチモーダル機能を導入し、より幅広い用途に対応することを狙っています。

Metaは、こうした柔軟性の高いマルチモーダルAIを提供することで、広告の精度向上やユーザーエクスペリエンスの改善など、自社の主要プラットフォーム全体の強化を進めており、クローズドモデルとは異なる独自の価値を追求しています。

Metaが目指すAIエージェントの開発と活用

Metaは、パーソナライズされた高性能なAIアシスタントの開発を最重要課題として位置づけています。ユーザーはFacebook、Instagram、WhatsApp、Messengerなど多様なアプリを通じてこのAIエージェントを利用可能です。MetaのAIエージェントの最大の特徴は、一律なサービス提供ではなく、ユーザー一人ひとりの興味、行動履歴、個性や文化的背景まで考慮して、個別に最適化した応答を提供できる点にあります。具体的には、ユーザーが過去に行った質問やアプリ上の行動データを活用し、1対1のチャット内で得られた詳細情報を記憶することで、より精度の高い提案や回答を行います。

また、Metaはソフトウェア開発の現場を根本的に変革する可能性を秘めた「AIエンジニアリングエージェント」の開発にも力を注いでいます。これは中堅エンジニアのコーディング能力や問題解決スキルを補完・強化するもので、2025年頃の実用化を目標に進められています。このエージェントにより、ソフトウェア開発プロセスの自動化、効率化、そして新たなイノベーション創出が可能になると期待されています。さらに、単なる会話型のチャットボットにとどまらず、複雑なタスクを自律的に分解して実行できるマルチステップのタスク処理能力も開発中です。これにより、アプリケーション開発やコード最適化といった高度な作業も、自動で効率よく処理できる未来が視野に入っています。

こうした技術基盤を活用し、MetaのAIエージェントは個人向けと企業向けの両方で幅広く利用されています。個人ユーザーは日常生活での疑問の解決、学習支援、さらにはユーモアを交えたコミュニケーションなど、さまざまな用途でパーソナライズされた情報を受け取れます。一方で、企業ユーザーに対しては、WhatsAppやMessengerを通じたビジネスチャットや顧客サポート業務の効率化に活用されています。さらにAIを活用した高度なパーソナライズド広告の提供により、マーケティング効果の最大化にも貢献しています。

人材に求められるスキルについて

Metaのような企業でAIエンジニアとして働くためには、一般的にどのようなスキルが求められるのかを整理してみました。必ずしもすべてを完璧に満たす必要はありませんが、以下のような技術や経験があれば、活躍のチャンスが広がりそうです。

AIエンジニアの求人ではよく、「Pythonが使えること」と書かれています。ただ、これは簡単なスクリプトを書ければ良いというわけではなく、ディープラーニングのフレームワーク(例えばTensorFlowPyTorch)を使ってモデルを作ったり、データの処理をしたりする程度の経験が必要なことが多いようです。他にも場合によっては、C++やJavaなどができると歓迎されることもあるそうです。これらは処理速度を改善したり、バックエンドの実装で使われることがあります。

また、アルゴリズムやデータ構造をよく理解していることも大切と言われています。これは、非常に大量のデータ(例えばテラバイト規模)を効率よく処理する必要がある場合に役立つスキルです。こうしたデータを現実的なスピードで処理するために、処理方法やデータ構造を工夫する能力があると仕事が進めやすくなるでしょう。

インフラやシステム設計に関しては、AWSやGoogle Cloud Platform、Azureなどのクラウドサービスを使った経験が役に立ちます。また最近はDockerやKubernetesといったツールを使って、AIのモデルを簡単にデプロイできるような仕組みを作ったりすることも増えているようです。こうした技術を知っていると、AIのモデル開発から実際の運用までスムーズに進められるかもしれません。

数学的な基礎知識もAIエンジニアにとっては役立つことが多いです。特に統計学や線形代数、最適化理論などは、モデルを改善する上で基礎となる考え方を提供してくれます。たとえば、モデルが学習データに合わせすぎて実際には役に立たなくなってしまう「過学習」を防ぐための方法を考える際には、こうした数学的知識が助けになります。

経験や実績についての考え方

企業は、単にモデルを作るだけでなく、それを製品やサービスに実際に活用した経験を評価する傾向があります。例えば、自分が作ったモデルによってサービスの利用者が増えたり、処理が速くなったりした経験があれば、履歴書や面接のときに良い印象を与えやすいかもしれません。

また、学会での論文発表やオープンソースコミュニティへの参加なども評価されることがあります。NeurIPSやICML、CVPRといった有名なAI関連の学会での発表経験があれば、技術的な信頼性を示すひとつの材料となりそうです。特許を取得したことがある、ベンチマークで良い結果を出した、という実績もあれば、採用側は安心してくれるかもしれません。

スキルや経験を積み重ねるには

ここで挙げたようなスキルや経験をすべて持っている必要はなく、少しずつ学びながら身につけていけば問題ありません。AIの技術は日々進化しているので、自分が興味のある分野や技術を少しずつ試し、経験を積んでいくことが大切だと思います。AIエンジニアとして働くためには、学び続ける姿勢や、新しい技術に触れてみる好奇心のほうが、完璧なスキルセットを持つことより重要かもしれません。

まとめ

Metaは現在、AIやメタバースの技術を融合させながら、新たな成長機会を見つけようとしているようです。現場では研究者やエンジニアが日々新しい技術を試し、企業間の連携や実際のプロジェクトを通じて、少しずつ社会で使える形に近づけています。また、オープンソースを中心にしたコミュニティ戦略によって、優秀な人材から注目を集めることにも成功しているようです。

AI業界でキャリアを作っていくには、新しい技術やトレンドについて継続的に学ぶ姿勢や、変化に柔軟に対応する力が大切になるかもしれません。AIが社会で本格的に活用される時代はまだ始まったばかりですが、Metaのような企業が取り組むプロジェクトの成果が、業界全体にも少しずつ影響を与えていくのだと思います。

Metaのような先端企業の取り組みを知り、AI業界での仕事やキャリアアップに興味を持った方は、ぜひAIDB HRが提供するキャリア支援サービスもご覧になってみてください。最新の求人情報や役立つ情報が揃っていて、自分に合ったキャリアの可能性が見つかるかもしれません。

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