最終更新日:2019/10/31
論文;An image-based deep learning framework for individualising radiotherapy dose: a retrospective analysis of outcome prediction についてのレビュー記事です!
AIが、医療用スキャン(MRIやCT)や電子カルテの情報をもとに、ガン患者一人一人に合わせた放射線量を提示して治療を手助けしてくれる――クリーブランド病院の研究者グループが発表した。
データ活用でAIが適切な放射線治療を提案
まず、MRIやCTの情報を利用して、AIが照射する放射線量に関して情報を引き出す。そして、患者に合わせて腫瘍の特徴や治療の成功を左右しうる他の要因も提示してくれる。この新たなAI技術は、将来の放射線治療に影響を与えるだろう。現在、ガン患者への放射線治療は画一的に行われている。だが、The Lancet Digital Healthに研究結果を発表した研究者らによると、個別化放射線療法を取れば治療の失敗を5%未満まで減らすことができるそうだ。
AIが放射線治療にもたらす影響は大きい
クリーブランド病院の研究者らは、治療前の肺のCT画像944人分をマルチタスクディープニューラルネットワーク機能(※1)を備えたディーププロファイラー(※2)にかけ、患者の電子カルテ記録も利用して、治療結果を予測した。
クリーブランド病院のタウシグがんセンターの放射線腫瘍学者であり、ラーナー研究所の所員でもあるMohamed Abazeed博士は、次のように述べている。「放射線療法は多くの臨床現場で高い効果が認められていますから、放射線量の最適化機能がもたらす恩恵は非常に大きいです。このAI技術を使えば、データをもとに、医師は患者ごとに個別の放射線照射スケジュールを立てることができます。治療成功の可能性は最大限に高まり、放射線による副作用も軽減できるでしょう」
機械学習+ニューラルネットワーク…CT画像がカギを握る
カルテ内の画像や情報を利用して、AIモデルが個人に合わせた放射線照射量を提示してくれる――研究者らによると、これは機械学習とニューラルネットワーク(※3)の能力を併せ持つ、人工ニューラルネットワークを使用したハイブリッド型モデルであり、事前に得られるデータをどの程度を利用するか、ネットワークが決定する。
この研究内で「最大のカギを握る情報」は、照射放射線量の個別化に一役買うCT画像であると研究者らは述べた。AIはCT画像から予測的特徴を学習することができるためだ。
「ディープラーニングを含む機械学習ツールが、医療の分野で重要な役割を果たす準備が整いつつあります」とAbazeedは述べた。「この画像中心の情報プラットフォームの機能を活用すれば、ガン治療の様々な選択肢を個別化することができますし、放射線治療の精密度合は、間もなく飛躍的に進歩するでしょう」
(※1)マルチタスクディープニューラルネットワーク
…機械が自動的にデータから特徴を抽出してくれる+複数の工程を同時に行える仕組み
(※2)ディーププロファイラー
…機械が自動的にデータから事象の性質や特徴を推論する仕組み
(※3)ニューラルネットワーク
…人間の脳の神経細胞(ニューロン)の構造を模倣したシステム。膨大なデータを分類し、人間の脳のように様々なパターンを認識できるようになる
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