最終更新日:2019/10/31
それぞれ異なる分野の専門家による治療計画立案の取り組みのため、ヨーロッパのAI専門家14人で構成されたタスクフォースが、ヘルスケアにおけるビッグデータ分析を目的としこの技術を使用している人のためのガイドラインを発案した。
研究の概要
「考慮すべき点」は、主にリウマチ性や筋骨格系の疾患に焦点を当てたものであるが、その推奨事項は他の医療専門分野や世界の他の地域にも容易に適応することができる。
チームの論文は、6月22日にオンライン誌Annals of the Rheumatic Diseasesに掲載された。
ソルボンヌ大学のLaure Gossec医学博士および欧州リウマチ学会(*European League Against Rheumatism)のメンバー13人が文献を見直し、自らの専門分野やその他の医学分野におけるビッグデータの使用現状を分析した結果、このガイドライン発案に至ったのだ。
原則を見出した
証拠レベルと推奨度を割り当て、次に平均合意レベルを計算した後、タスクフォースメンバーは3つの包括的原則と10の考慮すべき点を考案した。
その原則は、倫理的側面やビッグデータが医療提供を変える可能性への働きかけ、そしてそもそもビッグデータを扱うというのが最終目標である。
後半部分に関して著者らは、自らの分野が常に「リウマチ性および筋骨格系の障害を持つ人々に利益があること」を目指す必要があるとコメントしている。
10余の考慮する点の内3つが以下である。
1.ビッグデータの量が増えるにつれて、データ整合化の必要性がより明白になり、世界標準の適用を通じて異なるデータソースを使用する可能性がある。
「既存および今後新出し得るデータセットを確実に使用できるようにすること、特にビッグデータアプローチのためにプールできることを保証することが不可欠である」と著者ら。
「そうするために、データの相互運用性を促進するために調和・調整しなければいけないのです。」
2.学際的コラボレーションはすべての研究プロジェクトにとって有益かつ必須ではあるが、専門知識がさまざまな関係者間で分散しているビッグデータプロジェクトにおいては、より重要である。
「タスクフォースは、分析段階における、適切な利害関係者間の協力の重要性を主張しました。
たとえば、AI手法を用いる際に適切な専門知識が必要な場合や、ビッグデータプロジェクトのすべての段階で。」と、著者は記述している。
「データ収集と分析の種類が目的に適していることを確認しながら、最も適切な設計を選択できるようにするために、プロジェクト間の学際的コラボレーションをさまざまなタイミングで行う必要があります。」
3.ビッグデータの分野における臨床学、生物学、イメージング研究者、ヘルスケア専門家および計算生物学者・データ科学者のための学際的な訓練は重要であり、本分野における共同作業の必要性と密接に関連している。
これについて著者は以下のように述べている。
「機械学習法は、広く普及しつつあり、科学的発見に大きな意味を持ちます。 しかし、医療専門家は正しい使用法を完全には認識していませんし、データ科学者も研究設計しその結果を解釈するための臨床知識を欠いている可能性があります。リウマチ性障害および筋骨格障害の分野におけるビッグデータに関連する専門知識の現在の相対的な不足、そしてこの分野における急速な変化を考えると、関連組織はトレーニングセッションを設定・促進するべきです。」
この議論において、Gossec医学博士らは、自身のガイドラインは公けに認められてこそいないが、AIに関する将来的な議論のパラメータであったりヘルスケアにおけるビッグデータの設定を手助けするツールになりうると主張している。そして他の医療分野でもうまく適用されることができると指摘しているのである。
「これらの点を考慮することで、政府機関や研究機関、ヘルスケア提供者、研究者、患者が、関係者の適切な訓練を強化することができると期待している」と述べ、この研究は「再現性のある研究におけるベンチマークやガイドラインとなれる可能性がある」と付け加えている。
原文
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