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非エンジニアはLLMの誤りを見抜けるか 営業やマーケ担当者がAI生成データの検証で直面する課題

2025.08.20
深堀り解説

本記事では、非エンジニアがLLMを用いたコード生成やデータ分析にどのように向き合っているのかを調べた研究を紹介します。

営業やマーケティングの担当者が、専門的な技術知識を持たないままLLMを業務に活用する場面が増えており、その可能性とリスクが注目されています。LLMの出力に含まれる誤りをどの程度見抜けるのかを検証し、説明の仕方や表示方法が判断に与える影響も分析しています。

背景

LLMによるコード生成は、すでに多くの開発者にとって日常的なツールとなっています。エンジニアであれば、生成されたコードの誤りを見抜き、必要に応じて修正することが可能です。

いま注目すべきは、そうした技術を「非エンジニア」が使い始めていることです。営業やマーケティングの現場でも、自然言語だけでLLMに分析を依頼し、結果を受け取るといった利用が広がっています。ただし、非エンジニアはコードの誤りを構造的に判断することが難しく、高度な分析の妥当性を検証するための技術的な知識も十分ではありません。そのため、LLMが示した内容をそのまま受け入れてしまうリスクがあります。

とはいえ、非エンジニアも自身の専門分野に関する知識や、ある程度の批判的思考力を持っています。それらを活かせば、LLMの出力に対して一定の検証は可能かもしれません。しかし、もしLLMが頻繁に間違いを犯し、それを確実に見抜けないのであれば、安全な業務遂行は難しくなります。

LLMによるコード生成は、非エンジニアにとって大きな可能性を秘めています。専門家の手を借りなくても、複雑な分析を迅速にこなせるかもしれない。しかし一方で、その結果をどこまで信頼してよいのか、人間の側がどの程度まで補完できるのかは、まだはっきりしていません。

本記事では、こうした背景を踏まえ、非エンジニアが実際にLLMをどう使いこなしているのかを探る調査を紹介します。対象となるのは、日常的にスプレッドシートを扱う一方で、高度な分析は専門外である営業やマーケティングの従事者たちです。専任のデータアナリストに頼れない状況で、彼らはどのようにLLMと向き合っているのか。ビジネスにおける重要な意思決定にAIを使うには、どのような課題があるのか。

「非エンジニアがAIによるコード生成を、安全かつ効果的に活用できるのか」という問いに、現場の視点から迫ろうとしています。

非エンジニアは、LLMのミスにどこまで気づけるのか

コードに詳しい人でも、LLMの“うっかり”には気づけない?

LLMが生成したコードには、文法的なミスだけでなく、ロジックのズレや意図との食い違いといった誤りが含まれていることがあります。そしてそれに気づけないのは、プログラミング初心者だけではありません。過去の研究でも、経験豊富なエンジニアがLLMの出力を鵜呑みにしてしまう場面があることが報告されています。

また、プログラミング経験の浅い人を対象にした研究では、「どう指示を出すか」「どうコードを編集するか」といった操作面にフォーカスが置かれてきました。生成されたコードの正しさそのものを、ユーザー自身が判断できるかどうかについては、研究者が評価を肩代わりしていたケースが多く、じゅうぶんに検証されてきたとは言えません。

説明のしかた次第で、判断力は変わる?

とはいえ、前向きな知見もあります。たとえプログラミングに不慣れな人でも、コードの内容を自然言語で丁寧に説明してもらえれば、ある程度理解し、場合によっては修正までできる可能性があるという研究結果も出ています。

もちろん、そのためには説明の質が重要です。専門用語をなるべく避け、コードがどのように動作するのかを明快に伝えることが求められます。

表示の工夫ひとつで、理解度は変わるかも

LLMの出力の見せ方も、ユーザーの理解に影響を与える要素のひとつです。たとえば、ロボット制御やスプレッドシート操作の分野では、処理の流れをビジュアルで表現したり、コードを補助的な列や要約に分解して表示することで、ユーザーの理解や誤りの発見を助けられることが報告されています。

LLMを信じすぎず、でも疑いすぎず

LLMが提示する説明は、たとえ間違っていても「それっぽく見える」ことで信頼されてしまう傾向があります。こうした現象は、過去の研究でもたびたび指摘されており、検証をうながすリマインダーや、信頼度のコントロールといった工夫が提案されてきました。

今回の調査は、そうしたアプローチの一歩手前に立ち返ります。つまり、「非エンジニアは、そもそもLLMの出力に含まれる誤りに気づけるのか?」という根本的な問いに向き合ったのです。

調査設計

参加者が見るのは「説明文」だけ

調査の全体フローと参加者への提示内容

今回の調査では、参加者にコードそのものは一切見せず、LLMが生成した自然言語での説明文だけを提示しました。理由はシンプルです。

コードには、専門知識がなければ判断できない技術的な問題も多く含まれます。たとえば存在しないAPIを勝手に作り出してしまう「ハルシネーション」は、コードを直接確認しなければ見抜けません。

一方で、コードの実装が正しければ、その背後には評価可能な高レベルのアプローチがあるはずです。つまり包括的な説明文があれば、そのアプローチの良し悪しを判断できる可能性がある。そこで今回の調査は、実装レベルのミスを除外し、「アプローチそのものの欠陥に非エンジニアがどこまで気づけるか」を検証する形にしました。

LLMに2段階で回答を作らせる

調査に使う説明文は、すべて「Llama-3.1-70B-Instruct-Turbo」というモデルで生成しました。ただし、いきなり説明文を書かせたわけではありません。

まず、実行エラーが出なくなるまでコードを繰り返し生成。次にそのコードと出力結果を「手法」と「結果」に分けて説明させました。

なお、生成された説明文は研究者が人手で確認し、必要に応じて調整します。目的は、コードの内容を忠実かつ網羅的に説明しながら、非技術者でも理解しやすい文章にすることでした。

問題を3つのタイプに分けて分析

参加者が指摘した問題は、次の3つのカテゴリーに整理されました。

①技術的な問題

データサイエンスの知識が必要な問題。たとえば「テストに使うデータセットが小さすぎる」という指摘は、統計の基礎知識があってこそ可能です。

②ドメイン(専門分野)の問題

マーケティングなど、実務の知識が必要な問題。たとえば「売上分析で祝日の影響を考慮していない」と気づけるのは、この分野の経験を持つ人です。

③一般的な問題

特別な知識がなくても気づける問題。たとえば「平均二乗誤差(MSE)の数値は直感的に理解しづらい」という違和感は、批判的思考があれば指摘できます。

ひとつの問題が複数にまたがることもあります。たとえば「MSEが解釈しにくい」という指摘は、統計的な経験と直感的な批判的思考の両方で発見できるため、「技術的」と「一般的」どちらにも分類されます。

非エンジニアはどこまで気づけるのか実際の調査

調査の進め方

架空のテレビ会社の27週間分のマーケティングと売上データを共通の素材として使い、参加者にはタスクの説明とLLMの出力を提示しました。そのうえで、そこに含まれる問題点や改善すべき点を挙げてもらいました。

8つの現実的なタスクを用意

非エンジニアは一般的に、プログラミングの知識が限られており、分析の詳細よりも最終的な目標に意識が向きがちです。そのため、彼らの指示は抽象的で、具体的な要件が不足することも多くなります。ビジネスの現場では、実用的なインサイトを得るために広範な問いかけが行われ、それに応えるためには高度な分析も求められます。

こうした状況を踏まえて、研究チームは八つの高レベルなデータ分析タスクを設計しました。「売上を最大化するための要因をどう最適化するか」という大きな目的を、特徴量エンジニアリング、モデリング、最適化といったサブタスクに分解し、評価がしやすい構成にしています。

調査で扱った八つのタスク

論文では表にまとめられていました。日本語訳して掲載します。

タスク番号課題内容含まれていた欠陥の例
タスク1与えられたデータに重要な予測変数を追加し、精度を検証するマーケティング効果の遅延を考慮していない
タスク2追加した要因を用いて売上を最もよく予測するモデルを選ぶ平均二乗誤差(MSE)の解釈が難しく、評価が困難になる
タスク3既存モデルを使って現実的な範囲でドライバーを最適化し、売上を最大化する競合他社の広告表示回数を最適化対象にしてしまうなど、非現実的な提案を含む
タスク4価格を一定範囲で最適化し、平均売上の増加を評価する指定範囲全体ではなく、1つの価格のみで評価してしまう
タスク5同様のマーケティング施策が行われた週で売上が異なる理由を説明するデータ外の要因(例:祝日)を示唆するが、十分に議論できていない
タスク6複数週にわたる持続的な売上成長を促す要因を特定する売上と要因の単純な相関しか見ず、遅延要因などを扱えていない
タスク7特定の日付に売上が急増した理由を説明する祝日などの外部要因を考慮していない
タスク8プロモーションや値引きの増加が売上に与える影響を評価する線形モデルのみを使用し、効果の逓減を考慮できていない

参加者に徹底的に疑ってもらう工夫

LLMの出力に対して無批判に従うことを避けてもらうため、調査ではいくつかの工夫が施されました。

まず、各タスクには「LLMの手法や結果には誤りが含まれている可能性があり、改善の余地があります。中には一見して気づきにくい問題もあります」といった注意文を、目立つ位置に表示しました。さらに、上位三名には基本報酬に加えて6ドルのボーナスを支給する仕組みを設け、真剣に取り組んでもらえるようにしました。

また、すぐに問題を指摘してもらうのではなく、まずは「LLMの分析手法を自分の言葉で要約する」ステップから始めるよう依頼し、慎重な検討を促しました。

参加者の条件

参加者はProlificというオンライン調査プラットフォームで募集し、次の条件で選定されました。

  • プログラミングやデータサイエンスの実務経験がない
  • 大学を卒業している
  • マーケティング、営業、ビジネス開発のいずれかの職種に就いている
  • 月に1回以上、マーケティング関連のデータを業務判断に活用している
  • 米国または英国に在住している

結果、期待以上に難しかった

安全性に関わる重要な欠陥を見逃しがち

参加者と研究者の両方が特定した欠陥を集計したところ、多くの問題は一人の参加者しか指摘しておらず、全員が共通して見つけたような欠陥はありませんでした。中には、意思決定の質に直接影響するような重要な誤りであっても、誰一人として気づかなかったケースもありました。

技術的な問題にもある程度気づける

全参加者が指摘した欠陥は79件あり、それらを分析した結果、約7割が技術的な内容に関するもので、3割強がドメイン特有の問題、4割はどちらの専門知識がなくても気づけるようなものでした。指摘のばらつきは大きかったものの、参加者は限られた技術知識の中でも、内容を批判的に読み取ろうとする姿勢を見せていました。

参加者の具体的な反応パターン

調査で見られた参加者の行動には、いくつか特徴的な傾向がありました。

①大まかな議論に終始する傾向
手法の細部に踏み込むよりも、全体的な印象で評価を行うケースが多く見られました。
「この種の手法に明らかな欠陥はないようです。2つの異なるデータセットで2つのモデルを比較するのは生産的なアイデアのようでした」(タスク2を評価したマーケティング担当者)

②基本的なドメイン知識の適用不足
マーケティングに関わる知識があっても、それを技術的な文脈で活かせない場面がありました。
売上のピークを分析する際に、LLMが季節要因を無視している点に気づいた参加者はほとんどいませんでした。

③具体的なデータを求める声
抽象的な指標には納得できず、具体的な結果や図を見たかったという意見もありました。
「結果を裏付けるデータや図がありません。結果を信じろということでしょうか」(タスク2を評価した最高マーケティング責任者)

④明示的な問題には気づくが、暗黙的な問題は見逃す
目に見える誤りには反応できても、書かれていない要素の抜けや不足には気づきにくい傾向がありました。
特徴量エンジニアリングのタスクでは、LLMが追加すべき変数に誰も言及しませんでした。

⑤技術的な内容を誤解しているコメントもあった
一部の発言には、LLMの説明を取り違えていると思われる内容が見られました。
「テスト情報は、トレーニング情報よりも高い割合で使用されるべきです」(不動産マネージャー)

⑥LLMの回答に満足してしまうケースもあった
一部の参加者は、明確な問題を見つけられず、LLMの分析内容に納得した様子を示していました。

こうした結果から、LLMが生成するデータ分析をビジネスパーソンが単独で評価することには大きな困難があることが浮き彫りになりました。

表示方法を変えると判断力は向上するのか

上記、最初の調査では、参加者の評価には一定の傾向が見られましたが、なぜ多くの欠陥が見逃されたのかについては、まだ明らかではありませんでした。たとえばタスク3では、LLMが売上の最適化を過去のドライバー(広告費など)の範囲内に制限していました。しかし、直感的には、過去の最大値を超えて投資するという選択肢が浮かぶはずです。この問題に気づくのに技術的な知識は必要なく、批判的な視点さえあれば見抜けるはずなのに、参加者は誰も指摘できませんでした。

そこで研究チームは、次の2つの仮説を立てて検証を試みました。

二つの仮説

仮説1 LLMの判断が目立たない可能性

長い段落の中に埋もれたLLMの判断が、ユーザーの目にとまりにくくなっているかもしれません。この仮説を確かめるため、研究チームはLlama-3.1-70B-Instruct-Turboで回答を生成し、手動でステップごとに整理・調整を行いました。

段落形式からステップ形式に再構築したLLM回答の例

仮説2 代替案が見えない可能性

ユーザーがLLMの判断に対して他の選択肢を思いつけず、疑問を持たずにそのまま受け入れてしまっている可能性があります。これに対応するため、各ステップに対して2つの代替案を追加し、内容の明確化を図りました。

フォーマット済み回答に代替案を追加した例

調査設計

この2回目の調査では、新しく構成し直したLLMの出力を使用しましたが、それ以外の条件は最初の調査と同様です。18名の参加者を新たに募集し、被験者内計画を採用。1人の参加者が「ステップに分けた回答」と「ステップ+代替案付き回答」の両方を、それぞれ4つずつ評価しました。

結果 一定の効果はあったが限定的

ステップ形式にすることで単純な欠陥には気づきやすくなった

LLMの手法を整理したフォーマットを提示すると、参加者は手法の全体像を把握しやすくなり、その説明もより網羅的になりました。特に効果が見られたのは「価格帯全体で最適化すべきところを、1つの価格だけで評価していた」という明確なミスです。

参加者が発見した欠陥数の比較(フォーマット済み回答と代替案付き回答)

この問題に対しては、フォーマット済み回答を見た9人中8人が気づきました。一方で、代替案付き回答では4人、初回調査では10人中5人でした。ステップを明確にするだけで、直感的に理解しやすい欠陥には気づきやすくなったことがうかがえます。

代替案の技術的な複雑さが逆効果になることもあった

多くのケースで、代替案の追加は大きな違いを生みませんでした。代替案の内容が直接的に問題点を指摘していたとしても、それが十分に活用されたとは言えませんでした。

たとえばタスク2(売上予測に最適なモデルを選ぶ)、タスク4(価格を一定範囲で最適化し、平均売上の増加を評価する)、タスク8(プロモーションや値引きが売上に与える影響を評価する)では、ステップ形式のフォーマット済み回答を見た参加者の方が多くの欠陥を見つけています。これらのタスクでは、代替案があまりにも技術的で難解だった一方、実際の欠陥自体は「平均二乗誤差が解釈しにくい」「価格範囲全体を評価できていない」「効果の低下を考慮できていない」といったシンプルなものでした。

代替案についてのフィードバックでは、以下のような声もありました。

「代替案の内容は広い意味で参考になりますが、技術的な説明に偏っていて、意思決定者に必要な実用的な示唆よりも、手法の詳細に重点が置かれていると感じました。多くのマネージャーは、要点が整理されたまとめや、視覚的なレポートを重視していると思います」(マーケティングマネージャー)

代替案が批判的な思考を刺激したケースもある

タスク1(重要な予測変数を追加して精度を検証する)、タスク3(競合他社の広告表示回数などを含むドライバーを現実的に最適化する)、タスク5(同じようなマーケティング施策でも売上が異なる理由を説明する)、タスク7(特定の日付に売上が急増した理由を説明する)では、代替案付きの回答を見た参加者が最も多くの問題を指摘しました。これらのタスクで提示された代替案は必ずしも欠陥そのものに直結していたわけではありません。それでも、代替案が参加者の思考を深めるきっかけとなり、結果的に検出数が増えたと考えられます。

ただし、効果のメカニズムは明確ではなく、参加者数も限られているため、これらはあくまで初期的な兆候として捉える必要があります。

個人差も結果に影響した

代替案を活用して批判的に判断できた参加者もいれば、そうでない人もいました。ただしこの差は、職業経験やタスクに費やした時間などの要素とは明確に関連していませんでした。

全体の傾向

フォーマット済みの回答や代替案付きの回答は、文章だけの回答に比べて多くのケースで効果があることが分かりました。

提示方法ごとの欠陥発見数の分布

ステップに分けた形式の効果

タスク2(売上予測に最適なモデルを選ぶ)、タスク4(価格を一定範囲で最適化する)、タスク8(プロモーションや値引きの影響を評価する)では、ステップ化された回答を見た参加者の方が、より多くの問題を指摘しています。これらのタスクでは、代替案が難解すぎた一方で、欠陥自体は単純でわかりやすいものでした。

代替案の効果

タスク1(予測変数の追加)、タスク3(売上最適化)、タスク5(売上の違いの説明)、タスク7(売上急増の理由の特定)では、代替案付き回答を見た参加者が最も多くの欠陥を発見しました。代替案が直接的に問題を指摘したわけではないものの、それをきっかけに思考が深まり、結果的に検出が増えたと考えられます。

以上の結果から、表示の工夫には一定の効果があるものの、根本的な問題解決には至らないという限界も浮き彫りになりました。

考察

これまでの調査を通じて、LLMの出力に対して非エンジニアがどう向き合い、どこでつまずき、どこまで見抜けるのかが徐々に見えてきました。

欠陥の検出は想像以上に難しい

最初の調査では、LLMが生成したデータ分析に含まれる重大な欠陥を、ビジネス従事者が安定して見抜くのは難しいことが明らかになりました。しかし、見逃されると意思決定の質に悪影響を及ぼすものです。

この難しさは、単に技術知識の不足だけでは説明できません。多くの欠陥は、専門的なスキルがなくても、ドメイン知識や一般的な批判的思考によって発見可能なものでした。また、参加者にはあらかじめ「LLMは頻繁にミスをする」と伝え、注意を促し、金銭的なインセンティブまで提供していたにもかかわらず、見逃しが多くありました。

知識があっても技術文脈では活かしにくい

こうした傾向から見えてきたのは、業務知識や思考力を持っていても、それを技術的な説明の中で使いこなすのは簡単ではないという事実です。

たとえばLLMが丁寧に用語を解説し、手順を分け、代替案まで提示していても、それをうまく理解・活用できないケースが少なくありませんでした。さらに一部の参加者からは、そもそも「抽象的な説明には関心が持てない」といった傾向も見られました。彼らは統計手法の理屈よりも、実用的な示唆や、視覚的に整理されたアウトプットを重視していたのです。

表示の工夫で発見力を引き出せる可能性も

その一方で、参加者がさまざまな欠陥を実際に発見していたのも事実です。この力をもっと引き出すためには、LLMの説明をユーザー側の理解にフィットさせる必要があります。

たとえばグラフや具体的な結果などの視覚情報があると、理解しやすくなるという声も多くありました。また、説明をステップ形式に整理したり、複数の選択肢(代替案)を提示したりすることで、内容への関心や理解が高まる兆しも見られました。ただし、代替案が難解すぎても、逆に効果が薄れるため、「わかりやすさ」と「深さ」のバランスが重要です。

ユーザーによって差が出る

調査では、検証能力に大きな個人差があることも浮き彫りになりました。代替案を活用して深い指摘をした参加者もいれば、ほとんど問題点を見つけられなかった人もいます。

こうした差は、職務経験や作業時間といった表面的な要因では説明できず、より個々の認知的な特性や関心の持ち方に依存している可能性があります。

説明の設計はユーザーの理解に合わせるべき

以上を踏まえると、LLMの出力を非エンジニアが扱う前提で設計するには、「技術的に正しい説明」よりも、「その人がどう理解するか」に合わせた説明が求められることがわかります。

たとえば、単なる数式や用語の解説ではなく、背景や目的を視覚的に示したり、業務に関連した例を交えたりする工夫が有効です。また、代替案を提示する際は、「やさしいが浅い」「深いが難しい」といった両極に寄りすぎず、ユーザーにとってちょうどよい難易度を意識する必要があります。

より安全に使うための二つの道

最終的に、今回の調査は、非エンジニアがLLMを活用するうえでの二つの重要な方向性を示しています。

①LLM自体の信頼性を高めること
エンドユーザーが逐一検証しなくても済むよう、LLMの出力精度を向上させることが不可欠です。

②ユーザーの関与を支える説明設計
重要な判断ポイントを明確に示し、わかりやすいフォーマットや視覚化を取り入れることで、ユーザー自身が批判的に関与できる設計が求められます。

この2つを同時に進めることで、非エンジニアが現実の業務の中でLLMをより安全かつ効果的に使える環境が整っていくはずです。

信頼性の低い出力と、チェックの足りない運用。この組み合わせは、リスクのある意思決定につながります。今回の調査は、そのリスクの実態を明らかにするとともに、そこから脱するための具体的な道筋も示しているのです。

まとめ

本記事では、非エンジニアがLLMによるデータ分析の出力をどの程度検証できるのかを調べた研究を紹介しました。

調査では、技術的な知識がなくても発見できるはずの欠陥が多く見逃される一方で、説明の工夫によって一部の問題には気づきやすくなることが示されました。ただし、表示形式や代替案が常に有効であるわけではなく、理解を助ける一方でかえって難解になる場合もあることが確認されています。

全体を通じて、LLMの精度向上とともに、ユーザーの理解や利用環境に合わせた説明設計の重要性が浮き彫りになりました。こうした知見を踏まえて、自身の業務でLLMを利用する際に「どのように出力を検証し、どのように補助的な工夫を取り入れるか」を考えるヒントにしてみてはいかがでしょうか。

参照文献情報

  • タイトル:Non-programmers Assessing AI-Generated Code: A Case Study of Business Users Analyzing Data
  • URL:https://arxiv.org/abs/2508.06484
  • 著者:Yuvraj Virk, Dongyu Liu
  • 所属:University of California

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