本記事では、LLMがマルチターンの会話でどのようにつまずくのかを検証した研究を紹介します。
マルチターンの応答精度が期待どおりに保たれないことは、実運用においてもしばしば課題になります。
MicrosoftとSalesforceの研究チームは、その背景にある構造的な要因を大規模な実験で分析しました。
ユーザーや開発者が今できる対応についても、実践的な視点から示されています。

背景
ChatGPTをはじめとするLLMは、いまや日常の業務や調査で使われるツールとして多くの人に利用されています。問いかけに自然に答えるだけでなく、複数のやり取りを通じて目的を一緒に整理していく存在として期待されています。
使い方としては、最初はぼんやりとした要望を伝えるところから始まり、「そういえばこういう条件も入れてください」「やっぱりこういう方向に変えてください」と、やり取りを重ねる中で指示が具体的になっていく場面も多く見られます。
LLMの対話ログを分析した研究では、会話の初期は「情報不足」がちであることも確認されています。
こうした使い方が現実には当たり前になってきている一方で、LLMがそうしたやり取りにどれだけ対応できているかは、あまりハッキリしていません。というのも、LLMの能力を測る際の評価の枠組みが、そもそも実際の使い方とはズレた軸を立てがちだからです。
たとえば、多くの評価では「最初から条件がすべてそろった一発勝負の指示」が用いられます。要するに、会話の中で少しずつ情報が明らかになっていくようなプロセスに対するモデルの柔軟さや持続力を測っていないのです。
業務への応用を考えるなら、こうした状況にどこまで付き合えるかは無視できない要素です。少し曖昧な問いかけにも丁寧に対応しながら、次第に相手の意図を汲み取っていけるのか。それができるかどうかで、モデルに任せられる範囲も変わってきます。
この記事は、そうした疑問に正面から向き合おうとしている事例を紹介します。あえて情報が出そろわない状態から始まるマルチターンの会話を設計し、実際にLLMがどのように応じるのかが検証されたものです。対象となったのは、オープンソースのモデルから商用の高性能モデルまで(GPT-4.1やClaude-3.7 Sonnetなども含む)。幅広いタスクを用いて横断的な比較が行われています。
以下で詳しく見ていきます。ユーザーが今できる妥当な対処法や対策案についてもまとめています。
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