本記事では、人間が思いついたゲーム理論的なシナリオを、コンピュータが理解できるプログラムに自動的に変換する研究を紹介します。
ゲーム理論は、企業間の競争や生物の生存戦略、SNSでのユーザー行動など、様々な相互作用を理解するための数理的な手法として注目されていますが、現実の状況をモデル化するには専門家による多大な労力が必要でした。
そこで研究チームは、LLMの言語変換能力を活用し、専門家でなくても自然な言葉でゲーム理論的な状況を記述し、コンピュータ上で検証・分析できる仕組みの開発に取り組みました。
発表者情報
- 研究者:Agnieszka Mensfelt, Kostas Stathis, Vince Trencsenyi
- 研究機関:ロンドン大学
背景
ゲーム理論のシミュレーションは、私たちの身近にある様々な相互作用を理解するための手法として注目されています。例えば、企業間の価格競争、生物の種の生存戦略、SNS上でのユーザーの行動パターンなど、利害関係者が互いの選択に影響されながら意思決定を行う状況を数理的にモデル化し、分析することができます。
ところが、現実の状況をゲーム理論でモデル化するのは簡単ではありません。たとえば、自動運転車同士が交差点で出会った時のシナリオを考えてみましょう。各車両の目的(安全性と速達性のバランス)、利用可能な情報(他の車両の位置や速度)、取りうる行動(加速、減速、停止など)に加えて、交通規則や歩行者の存在といった様々な要素を考慮する必要があります。このような複雑な状況を数学的に記述するには、専門家による多大な労力が必要です。
ここで注目されるのがLLMです。LLMは人間の言葉を理解し、それを数式や論理式に変換する能力を持っています。研究者らは、LLMの「翻訳者」としての能力に着目しました。
そこで彼らは、LLMで強化されたエージェント(プログラム)を開発し、日常言語で書かれたシナリオをコンピュータが理解できる論理プログラムに自動的に変換することに成功しました。さらに、変換されたプログラムの正しさを、エージェント同士の対戦を通じて検証できる仕組みも構築しました。結果、専門家でなくても、自然な言葉で記述したゲーム理論的な状況を、コンピュータ上で検証・分析できるようになりました。
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