「うつ病」は,現代の精神科医療の主要な診断概念の1つです。自分自身,あるいは知人の中に,うつ病と診断された人がいる,という方は珍しくないのではないでしょうか。
一口に「うつ病」といっても原因や病状は様々であり万人に効く特効薬のようなものはありませんが,薬物治療が主要な選択肢になっていることは事実です。精神科の病院やクリニックを受診して「うつ病」と診断された場合,薬の治療が始まることが少なくないと思います。
【Asa-jirow】
精神科医。ゲーム製作会社,法律事務所勤務を経て医師に。AI学会会員。意識のハード・プロブレム,人工人格について考察中。
今回は,「うつ病」の症状が薬物治療によってどの程度改善するのかを機械学習で予測しようと試みた研究を紹介したいと思います。
うつ病の治癒効果は予測できるのか
研究を行ったのは,米国スタンフォード大学のRajpurkarらのグループです。対象は,5か国20施設において「うつ病」と診断された18歳から65歳までの患者518名。うち女性が274名で,平均年齢は39歳でした 。
研究の手順は
- まず治療開始前に,各患者の症状を「ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton RatingScale for Depression:HAM-D)」という,症状チェックリストで点数評価し,併せて脳波検査をしておく
- 次いで,各患者に抗うつ薬(エスシタロプラム,セルトラリン,ベンラファキシンのうちいずれか1つ)が投与され,薬物治療が開始される
- 8週間の治療経過後,再びHAM-Dで症状の改善度を評価する
- 最後に,各患者の治療開始前の症状プロフィールと脳波データを用いて,治療後の改善度(つまり治療効果)が予測できるか,検証する
という流れです。
以下, ①「『うつ病』の症状評価」と②「脳波」について簡単に説明した上で,今回の研究結果を確認してみましょう。
【論文】
タイトル:
Evaluation of a Machine Learning Model Based on PretreatmentSymptoms and Electroencephalographic Features to Predict Outcomes ofAntidepressant Treatment in Adults With Depression: A Prespecified SecondaryAnalysis of a Randomized Clinical Trial.
著者:
Rajpurkar P, Yang J, Dass N, Vale V, Keller AS, Irvin J, Taylor Z, Basu S, Ng A,Williams LM.
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