おそらく、どの国においても「自殺」は深刻な社会的課題の一つです。日本の場合,一時は全国で3万人を超えていた自殺者数が近年は次第に減少し,2019年にはおよそ2万人となりました(それでも依然多いのですが)。
ところが厚生労働省の統計によれば,2020年は11月までで1万9千人を超えており(暫定値),どうやら年間自殺者数が再び増加に転じそうな状況です。特に今年の7月以降の増加が著しく,新型コロナウイルスの影響がここにも表れてきている可能性があります。
追記:令和2年年間の累計自殺者数(20,919人:速報値)は、対前年比750人(約3.7%)増という結果になりました。(厚生労働省資料より)
自殺は医療全般に深く関係する問題であり,特に精神科においては患者さんの自殺行動の予測・予防は主要なテーマの1つでもあります。同じく厚労省公表の年齢別死亡原因を見てみると,10代前半(10-14歳)では第3位,10代後半(15-19歳)では第1位が「自殺」となっており,若くして自ら死を選んでしまう人が決して珍しくはないという現実を認識させられます。
(参考URL:死因順位別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率 )
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【Asa-jirow】 精神科医。ゲーム製作会社,法律事務所勤務を経て医師に。AI学会会員。意識のハード・プロブレム,人工人格について考察中。 |
今回は,児童・思春期患者の自殺企図を電子カルテ情報から予測しようとする,米国での試みについて紹介します。
電子カルテから予測因子を特定して予測モデルを構築
研究主体
ニューヨーク州Weill Cornell MedicineのSuらのグループ
対象患者
2011年10月~2016年9月の5年間にコネチカット小児医療センターを受診した10~18歳の患者41,721人(うち自殺企図ありが180人,なしが41,541人)
分析対象となったデータ
これらの患者の電子カルテに記録されている「基本情報(年齢,性別,人種など)」,「診断名」,「検査結果」,「処方内容」です。
手順
まずカイ二乗検定等を用いて自殺企図の予測因子となりうるデータ項目を絞り込んだ上で,sequentialforward selectionという手法を用いて各項目の重要度を割り出して自殺企図の予測モデルを構築する,という手順がとられました 。
なおこの研究では、予測ウィンドウを9段階(0日後から,7,14,30,60,90,180,270,365日後以降まで)に設定し,それぞれのウィンドウにおいて個別に自殺行動の予測因子を選び出すという細かい手順が採用されています。ともかくこれにより,
①自殺企図の予測するための重要因子の特定
②自殺企図の予測モデルの構築
がなされました。以下,結果を確認しておきましょう
【論文】
タイトル:
Machine learning for suicide risk prediction in children and adolescents withelectronic health records.
著者:
Su C, Aseltine R, Doshi R, Chen K, Rogers SC, Wang F.
掲載日:
2020年11月
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