AIは「薬らしさ」を見つけられるか?化合物の分類に挑戦(AI×医薬品)【論文】

   

最終更新日:2022/12/05

すべての化合物が薬になれるわけではない。AIは、薬になりうる化合物のパターンを見つけることはできるのだろうか。

もくじ
課題:薬の設計を効率化したい
テーマ:薬になりうる化合物を機械学習で予測する
目的:薬物と非薬物を分類したい
手法:複数の機械学習アルゴリズムを使用した
結果:高い精度で薬物と非薬物の分類に成功した

課題:薬の設計を効率化したい

ドラッグデザインとは、薬として望ましい生理活性を示す化合物を合成する方法であり、創薬プロセスにおける重要な手法の一つである。薬が効果を発揮するための化合物の特徴を予測することは、創薬プロセスの大幅な改善に繋がると期待されている。

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薬としての化合物の特徴の予測という課題においては、実際にどんな研究が行われているのだろうか。イスラエルにある法科ビジネス単科大学のAbraham Yosipofら研究者の発表を紹介したい。

彼らは、化合物の物理化学的パラメータの特徴を用いることで、化合物を薬物と非薬物に分類する機械学習モデルの構築を試みたのだった。

テーマ:薬になりうる化合物を機械学習で予測する

まずはAbraham Yosipofらの研究におけるミッション・手法・結果をまとめた。

✔️ミッション
化合物の薬としての可能性を予測する。

✔️解決手法
複数の機械学習モデルにより、物理化学的パラメータから化合物を「薬物」と「非薬物」に分類した。

✔️結果
0.81を超える分類率が得られ、有効な疾患カテゴリーの分類にも成功した。

ミッションから説明していく。

目的:薬物と非薬物を分類したい

近年では、ドラッグデザインを効率よく実施する技術として、データマイニングと機械学習に期待が集まっている。これらを活用することで、開発における重要な化学的・薬理学的特徴の基本的なパターンを見つけ出し、それらの特性に従って、薬としての化合物の設計を最適化できると考えられている。また、化合物を薬物か非薬物かに分類できるようになれば、薬物が有効に働く疾患についても分類できるかもしれない。

手法:複数の機械学習アルゴリズムを使用した

Abraham Yosipofらは、化合物を分類するための機械学習モデルを構築した。

データセットには、化合物データベースであるDrugBankから762種類の化合物を用いた(薬物:366化合物と非薬物:396化合物) 。

物理化学的パラメータは、ChemAxonを使用して、logP値や分子表面積など、35の分子特徴を用いた。

機械学習アルゴリズムとしては、決定木ランダムフォレスト(RF)、サポートベクターマシン(SVM)、人工ニューラルネットワーク(ANN)、k-近傍法(k- NN)、ロジスティック回帰(LR)、およびこれらを組み合わせた手法であるAL Boostを用いた。






結果:高い精度で薬物と非薬物の分類に成功した

結果、AL Boostでの分類率(CCR)は0.81と良好で、他の6つのアルゴリズムの平均CCRは0.77となった。

薬物と非薬物の分類

さらに、抗腫瘍薬や神経系薬、心血管薬などの疾患カテゴリーについて予測し、高い精度での分離に成功した。

抗腫瘍薬と神経系薬の分類

以上より、本モデルは、化合物の薬としての可能性や、薬が効果を持つ疾患の予測などに応用できると期待される。

研究紹介は以上だ。

今後、様々な疾患ごとのドラッグデザインの効率化が実現されるかもしれない。

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この記事で取り扱った論文:Abraham Yosipof,et al.,”Data Mining and Machine Learning Models for Predicting Drug Likeness and Their Disease or Organ Category”,Front. Chem.,6,162, – DOI


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masashi

投稿者の過去記事

大学院では薬学の研究を行っていました。主に創薬・製造・金融分野におけるAI活用を掘り下げたいと思います。Twitter:@masa05240112

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