最終更新日:2020/04/27
清野雄多さんは、新潟大学の歯学部大学院で研究をしている歯医者さん。
普段は歯科分野でAI技術を生かした研究に取り組む傍らで、 このウェブメディアサービス「アイブン」のライターとしてコンテンツ制作にも携わっています。
専門家の目から見た、歯科業界の将来とテクノロジーの関係性とは?
「起業も考えている」その熱い想いとは?
そして、専門家がメディアで発信する意義とは?
アイブン編集部が直撃取材しました!
メディアではAI全般の知識を発信
はい、アイブンではAIに関するクイズを作っています!
1日1問、100日間続く企画です。
私がこんなこと聞くのも変ですが、100日間続きそうですか?
問題なく続くと思いますよ!
頼もしいです!クイズってユニークな切り口ですよね。クイズは元々お好きなんですか?
実は、そういうわけではないですね(笑)
ただ、知識って、聞かれて初めて、知っているか分かりますよね。自分の頭の中を確認する作業において、必要かなと思います。
なるほど!
アイブンでAIのクイズを作っていただくようになる前から、清野さんは個人的にAIの問題集を作っていたと思うんですが、どうしてそのような活動をされていらっしゃるんですか?
そうですね、学生同士で機械学習の勉強会をしているためです。みんなの知識を揃えるため、日本ディープラーニング協会のG検定を活用しました。
企画ができた段階で、検定をもっていたのは自分一人だったんです。それで先生役として問題を作るようになりました。
周りに誰も検定保持者がいない中、どうして挑戦しようと思ったんですか?
新潟大学では「ビッグデータ活用研究センター」を設置し、研究と教育に運用し始めています。そのコアメンバーの先生方に学ぶ学生たちで機械学習勉強会を立ち上げました。
いざ検定を受けてみたら、どうでしたか?目的と、得られたものは合致していましたか?
専門用語を理解して使えるようになったのは大きいと思っています!
本業は歯学の研究者
なるほど!では、ビッグデータ活用をする専門領域のスペシャリストという立場でいらっしゃると思うのですが、普段はどんなことをされていらっしゃいますか?
医歯学総合研究科に所属しています。研究テーマは、歯髄(骨にとっての骨髄にあたるもの)の再生です。なので普段はマウスを飼って、マウスの歯で実験しています!
歯は再生しないものという認識があるんですが、将来的には永久歯も再生したりするんですか!?
再生自体はもうすでに出来ています。問題は形態とサイズですね。いずれ培養した歯をインプラントできるかもしれません。
研究はそんな感じですが、教育では人体解剖学実習を教えています!あまり知られていませんが、歯学部生も人体解剖を行います。
研究もしていて、学生に人体解剖を教えたりもしているんですね!そんな中、機械学習を活用していく野心をお持ちでいらっしゃるんですね。
遺体の身元確認にAIを活用したいです。遺体の身元確認は、顔や身分証だけでなく歯でも行います。災害時には遺体が損壊することもあり、硬組織である歯が有用になるわけです。この作業には、実は時間も人手もかかるのですが、その間にも他のご遺体が腐敗していくのです。この作業の簡略化とデジタル化を目的として研究をはじめました。
なるほど、そのような思いがあるのですね。
AI等テクノロジーで歯学・医学は変わる
これからは清野さんのように各分野の専門家がテクノロジーを上手く活用していく時代だと感じています。
専門領域の将来に思いを馳せたとき、AIをはじめとしたテクノロジーの進化が、業界をどのように変えていくと思いますか?
機械学習には大量のデータが必要なので、データの集まりやすい領域から応用されていくと思います。現在は、健康診断で撮る胸部エックス線画像が多いです。
他には内視鏡などの非エックス線で、かつリアルタイム画像もあります。内視鏡画像では消化器系のがんを発見するのに活用されていて、この分野は日本が世界をリードしています。
それは勇気づけられるお話ですね!
そして医科で活用された技術が歯科に応用されます。歯科ではエックス線画像を使った研究、例えば齲蝕検知などが圧倒的に多いです。僕のように口腔内写真の研究はほぼありません。
清野さんはX線ではなく、普通の写真を使用して診断できる技術を研究しているので、かなり先端的なことをやられているというわけですね!
やっぱり流れとして、データの多い領域から応用されていくと思います。なので歯科ではエックス線が主流になるでしょう。
ありがとうございます。
かなり詳しく教えて頂きました。
研究者か起業家か?将来を考える
これから色々と状況が変わっていくと思うのですが、現時点での「清野さんの今後」のイメージをお聞かせください!
やっぱり、医用画像の機械学習の分野に進みたいです。
大学に残るのか、あるいは会社をおこすのかは決めかねているところです。
起業する場合は、どのような方がお客さんになりそうなイメージですか?
警察や法医学教室の方を想定しています。災害時は歯科医師も動員されますが、平時には警察の方が撮影を行うことも多いです。みなさんが簡単に使えるアプリを開発したいと思います。
いまは、研究者になるかスタートアップをやるかと言うと、どちらの方が可能性ありますか?
うまくいけば会社をやるかな、と思っています。
アプリを作る場合は、どちらかと言うとユーザーインタフェースの方が難しいかなと感じています。物体認識はそこまで難しい技術ではないんですけど、インタフェースの設計は私がまだ分からない部分なので。他の人にやっていただいてもいいんですけど・・・
またアカデミアに残る場合は、新しい技術の開拓をやり続けることになるかと思います。
スペシャリストが発信する意義
アイブンでの働きがいや働き心地は、どうですか?
研究をやっていると、社会との接点はあまりなくて。なので、このようなメディアの仕事を通して「知識を外に出す」「反応がある」、これがとても嬉しいですね。
研究をやられている方が「社会との接点を持つ」という意味で、このサービスの運営に携わっていただくことに価値を感じていただけるのは嬉しいです!
ご自身の知名度を上げていくことにも関心がありますか?
そうですね。例えば、私は、エンジニア専門じゃないので、エンジニアとして着目されるようなスキルをもってるわけではない。そして歯学研究においても、強いインパクトを作れているわけではないです。なので普段、着目されることは少ないです。
しかし、「歯医者でありながら機械学習やっている」これは強みだと思っています。
それを人に言う機会はなくて。なので、この仕事を通して、知識があることはアピールしていきたい。そして社会に認識していただけたら嬉しいなと感じています。
今はクイズという切り口で一問一答を作って頂いていますが、他にも色々清野さんの持ち味を活かしたコンテンツを一緒に作っていけるかもしれないですね。
「焦らないくていい」学生に伝えたいこと
これから、どんな仲間が欲しいですか?
医療系で機械学習をやっている方と知り合いたいです!研究や事業で協力できるかもしれません。
何か、他にご自由に述べたいことがあればお願いします!
学生には「焦らなくて良い」と伝えたいです。今の学生は、というか過去の私は、「普通」でいながら「非凡な結果」を求められているように感じていました。
今の私は学振に採択されたり学会賞をもらったりとすごく優秀そうに見えますが、頭が良いとか能力が高いとかではありません。アイデアや運に助けられている部分が多分にあります。
基本を大事にして、チャンスがあれば頑張ってみるのが良いと思います。すごい人と自分を比較して落ち込むんじゃなくて、自分のできることをしっかりやっていれば、チャンスが巡ってくる感じがします。
素晴らしい思いを教えていただきありがとうございます!
本日はありがとうございました!
これからも宜しくお願いします!
歯科AIの研究者、清野さんの輝く未来に乾杯!
清野さんが制作する、AIクイズ100はこちらから。まずは第一問からどうぞ。
平日毎日更新しています!
キャリアを切り拓くために、アイブンで仕事をしませんか?
アイブンでは、ライターを募集しています。まだまだ未熟な点はありますが、日々手探りで試行錯誤を繰り返しながら、業界の発展を担えるような存在となることを志しています。
また今回の記事で紹介した清野さんのように起業を考えている方にとって、弊社のようなスタートアップで仕事を行うことは少なからずステップアップに繋がることでしょう。
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