AIエージェントを複数同時に動かす「マルチエージェント」への関心が再び高まっています。きっかけは、2026年1月にAnthropicがClaude Codeにチーム機能を追加し、複数のエージェントが並行して作業する仕組みを提供し始めたことがあります。
エージェントを増やせば、より複雑なタスクをこなせるようになるのでしょうか。
身もふたもない話ですが、答えは「場合による」です。最新の研究は、うまく組めば単体より強くなるケースがある一方で、組み方を間違えると単体以下にもなりうることを示しています。しかも、複数のエージェントが議論を重ねるうちに全員が間違った答えに収束したり、多数派の意見に引きずられて正解を捨てたりと、マルチエージェント特有の落とし穴も報告されています。
本記事では、マルチエージェントが効く条件と注意すべき落とし穴を、2025年後半から2026年にかけて発表された5本の研究から読み解いていきます。

「エージェントを増やせばいい」時代から設計の時代へ
複数のLLMエージェントを協調させて問題を解くというアイデア自体は、以前からありました。2024年2月に行われた研究では、同じ質問を複数のエージェントに投げて多数決をとるだけで、エージェント数に比例して性能が向上するという結果を示しています。「増やせば勝てる」という楽観的なメッセージでした。
しかし実際にマルチエージェント構成を業務で運用しようとすると、話はそう簡単ではありません。エージェント間の役割分担や情報の受け渡しをどう設計するか。コストは単純にエージェント数の倍数で膨らみます。チューニングの複雑さも増す一方で、本当に性能が上がっているのか測定しにくい。こうした現実の壁に直面し、マルチエージェントへの期待はやや落ち着いた時期が続きました。
その空気が再び動き始めたのが今です。Claude Code teamのようなツールが登場し、マルチエージェント構成を試す敷居が下がりました。同時に、研究の側でも「どういう条件で、どう組めば効くのか」を科学的に検証する動きが本格化しています。
今、研究から得られるエビデンスが重要になっています。期待が先行しがちなこの領域で、何が分かっていて、何がまだ分かっていないのか。5本の研究が示す知見を整理します。