最終更新日:2019/10/31
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究者グループによると、グーグルのAIに基づいたアプリ「グーグル翻訳」(以下GT)が、英語を話せない患者の助けになるという。しかし、JAMA Internal Medicineに掲載された研究によると、この翻訳技術はまだ完璧であるとは言いがたい。
自動翻訳の限界
これまでに行われたGTの研究で、その精度の限界が示されている。ある研究では、GTを用いて作成されたスペイン語の患者指導用資料は、内容のわずか60パーセントしか正確に翻訳されていないことが明らかになった。それだけでなく、翻訳結果の4%に重大な誤りが含まれていたという。
Googleは2017年にアルゴリズムを変更し、ザッカーバーグ・サンフランシスコ総合病院のElaine Khoong医学博士率いる研究チームが、救急部隊の指示をスペイン語と中国語に翻訳するGTの評価を行った。
具体的には、作成された救急科退院指示書(診断結果や経過観察指示書、投薬指示書など)100セットを評価し、投薬変更や症状全般についてオーバーサンプリングした。各文の分析は、コンテンツのカテゴリ、医学用語の使用、非標準英語(スペルや文法の誤り、略語、口語表現などを含む)の存在という観点から行われた。
被害につながる誤訳
指示書の内容はGTにより英語からスペイン語と中国語に翻訳され、それからバイリンガルの翻訳者により再度英語に翻訳された。すると、不正確な翻訳によって被害が起こる可能性があるという評価が、2人の臨床医によって出された。この被害の可能性は
1.臨床的に重大でない被害
2.臨床的に重大な被害
3.生命を脅かす危険のある被害
という段階的なシステムを用いて評価された。
100セットの指示書には、647の文章が含まれていた。研究者は、内容の92%がスペイン語に正確に翻訳され、81%が中国語に正確に翻訳されていることを突き止めた。しかし、誤訳の中には「臨床的に重大な」被害につながる可能性があるものがあった。これはスペイン語の翻訳では2%、中国語の翻訳の8%で見られた。
「GTを用いて英語で書かれた指示を補完することはできますが、機械翻訳された指示には不正確な翻訳が含まれている可能性があるという旨の警告を入れておく必要があります」
とKhoong氏と研究チームは述べた。
こうした害を回避するためには、医療サービスを提供する者は口頭でも説明を行いながらGTの翻訳を患者に読ませ、スペルや文法に注意を払い、専門的な医療用語を避けるようにするといった対応が考えられる。
「グーグル翻訳は臨床医が考えているよりも正確ですし、何も提供しないよりは絶対に有用であると思われます」
と発表の中でKhoong氏は述べた。
「我々は慎重にその使用を推進したいと考えます」
原文
https://www.aiin.healthcare/topics/diagnostics/ai-app-google-translate-helps-bridge-language-gap
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