こんにちは。アイブンライターの清野です。
最新研究をサクっとキャッチアップできる「今週の5本」シリーズ。今週のメディカルAI編では、以下の5つの最新AI研究に注目していきます!
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今週のラインナップ
1. 潜在的にC型肺炎ウイルスを持っている人を発見
2. あなたが知るべき機械学習モデルの性能指標
3. 困ったらTwitter上の病理医ボットに相談しよう
4. AI時代の脳卒中救命ワークフロー
5. 病理診断AIによる診断理由の可視化
今回も手術支援AIベンチャーCEOの河野健一医師にコメントをいただきました!
手術支援AI事業を展開している河野先生のiMed TechnologiesはAIエンジニアを募集しています!関心のある方はこの記事の下部をチェック!
潜在的にC型肺炎ウイルスを持っている人を発見
1本目は、C型肝炎ウィルスキャリアの発見に機械学習を応用した研究です。国際的な大企業であるIQVIAが自社のビッグデータを活用し論文として発表しました。カルテそのものがデータではない、というのが興味深いところです。
背景と目的
慢性C型肝炎ウイルス(HCV)は、世界的に肝硬変、肝がん、肝疾患による死亡原因の第一位であり、肝移植の主要な適応症でもあります。しかし、ウイルスを体内に保持していながらも症状の出ていない人(キャリアと呼ぶ)の約半数は診断されておらず治療を受けていません。そのため、潜在的なキャリアの存在は公衆衛生上で大きな問題になっています。そこで、ヘルスケア上の記録から、潜在的なキャリアを探索するAIが開発されました。
方法
アメリカの多国籍企業で、世界最大級の研究や臨床試験のアウトソーシングプロバイダであるIQVIAに所属するOrla M. Doyleらは、自社の2001年1月から2016年9月までのデータを解析しました。そのデータには、アメリカ国内の処方箋、医療費請求、薬剤の通販など数10億件オーダーの情報が含まれています。なお個人情報は保護されています。
すでにHCVキャリアと診断されている約1000万人を教師データとして、その特徴量を抽出しました。使用したモデルは、ロジスティック回帰、ランダンフォレスト、XGBoost、スタック型アンサンブルメソッドです。
結果と考察
平均すると、患者は診断を受ける2-3年前からC型肝炎の症状を呈していることがわかりました。感度を10%にすると、すべてのモデルで精度は95%を超えました。感度を50%とするとスタック型アンサンブルメソッドでは97%、XGBoostで85%、ロジスティック回帰では31%でした。
この結果は、アメリカ疾病対策センターが推奨するガイドラインのスクリーニング率よりも高い精度を有しており、AIアルゴリズムがHCVスクリーニングに有効である可能性を示唆しました。
河野先生(医師兼CEO)のコメント
本研究のポイントはカルテなどの情報ではなく、処方箋、医療費請求、薬剤の通販などの情報を用いていることです。言い換えると、アクセスしやすい情報ということになります。
アクセスしやすいデータを使用すると、実用化が具体的に見えてきます。例えば、スマホに処方箋や医療費などの情報を保持するようになれば、その情報を用いて瞬時に判断が可能となります。もし、カルテ情報が必要になると、そのデータへのアクセスのハードルが高くなるため、実用化が難しくなります。
このようにデータのアクセスのしやすさは実用化のポイントのひとつです。
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あなたが知るべき機械学習モデルの性能指標
2本目はレビュー論文です。「性能が上がる」、「精度が高い」って結局どういうこと?それを知的に共有するには論文に何を書くべきなの?というのが、本論文に通底する問いです。
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