うつ病のバイオマーカーを予測!創薬AIの最新研究5選【週刊】

   
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薬づくりが変わる、業界が変わる。

このシリーズでは「製薬業界を変えるAI技術」と題して、創薬AIに関連する研究を毎週ご紹介します。以下のような用途でご活用ください。

  • 業界の将来予測
  • AI技術調査
  • 各病における治療法の展望

担当するのは薬学部出身ライター、Masashiです。

今回は以下の5つの研究に注目していきます!

今週のラインナップ
1. 治療指数が低い薬の特徴を予測
2. 薬物間相互作用から心血管系の副作用を予測
3. 抗がん剤の有効な組み合わせを予測
4. 副作用が少ない抗がん剤を予測
5. うつ病のバイオマーカーを予測

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治療指数が低い薬の特徴を予測

中国・浙江大学(2018年10月31日発表)

治療指数は、その数値が大きいほど、治療量と中毒量とに差が大きくあることを意味する値であり、安全域とも呼ばれます。治療指数の低い(NTI)薬と反対のNNTI薬を、薬の特徴から予測できれば、有効性と安全性を考慮した創薬に貢献できるかもしれません。

中国の浙江大学の研究者らは、AIアルゴリズムを利用して、NTI薬を分類するために有効な薬物の特徴を分析しました。結果、薬物の標的タンパク質間相互作用と生物学的作用のうち8つの主要な特徴量(平均接近中心性や相互接続性など)に絞ることができ、NTI薬の標的は類似性が高く、標的関連経路の数はNNTI薬の標的よりもはるかに多いことを明らかにしました。将来的には、今回発見した特徴量を用いることで、薬の治療指数の予測にも応用できるかもしれません。

ソース:Determining the Balance Between Drug Efficacy and Safety by the Network and Biological System Profile of Its Therapeutic Target.

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薬物間相互作用から心血管系の副作用を予測

ロシア・モスクワ医科大学(2019年7月19日発表)






薬の副作用による心血管系の影響は、入院や死亡につながる可能性があるため、前臨床動物試験および臨床試験中に調査されます。しかし、すべての副作用を検査するのは困難であるため、あらかじめ副作用を予測できれば、市場に出た後の副作用による問題を解決できると期待されます。

ロシアのモスクワ医科大学の研究者らは、薬物間相互作用情報を基に、心血管系の副作用を予測する機械学習モデルの開発を行いました。結果、5つの心血管系副作用(心筋梗塞、虚血性脳卒中、心室頻拍、動脈性高血圧、心不全)に対して、AUC、感度、特異度、平均正解率の平均値はそれぞれ0.837、0.764、0.754、0.759でした。本モデルにより、心血管系にとって最も危険な、または最も危険でない薬物の組み合わせを特定するために使用できるでしょう。

ソース:Assessment of the cardiovascular adverse effects of drug-drug interactions through a combined analysis of spontaneous reports and predicted drug-target interactions.

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抗がん剤の有効な組み合わせを予測

フィンランド・ヘルシンキ大学(2019年5月20日発表)

がん細胞は、薬剤耐性を容易に獲得する可能性があるため、薬剤耐性の出現を効果的に克服できる新規の多標的薬剤の組み合わせが必要です。しかし、薬物の組み合わせの数が増えると、抗がん剤のスクリーニングの正確な自動化は困難になるため、薬物併用の有効性を定量化できる機械学習手法の開発が期待されています。

フィンランドにあるヘルシンキ大学の研究者らは、二つの薬物間の相互作用と併用による有効性のスコアを予測するための機械学習モデルを構築しました。39のがん細胞に対する22,737の薬物の組み合わせからなるO’Neilデータベースのデータを予測モデルを適用した結果、平均MAEが4.01で、薬剤の組み合わせをより正確に評価ができることを示しました。今後、提案された手法は、がん治療に有効な薬物の組み合わせの新たな発見に広く適用されるでしょう。

ソース:Drug combination sensitivity scoring facilitates the discovery of synergistic and efficacious drug combinations in cancer.

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副作用が少ない抗がん剤を予測

アメリカ・ニューヨーク市立大学(2019年6月17日発表)

がん治療のための化学療法は、副作用として心不全のリスクを上昇させます。近年、一つの薬で多数の標的に作用して副作用を軽減できる治療法が注目されており、心不全の治療に加えて抗がん作用を有する薬を発見できれば、副作用の少ない抗がん剤の開発が可能になると考えられます。

アメリカにあるニューヨーク市立大学の研究者らは、1,656,274個の化学物質と9,685個の標的タンパク質の相互作用データを用いて、薬物のオフターゲットを予測できる機械学習モデルを構築し、心不全薬の抗がん活性を検討しました。結果、心不全治療薬であるレボシメンダンが複数のがん細胞、特にリンパ腫の増殖を阻害する可能性があることを予測し、実験的に検証することに成功しました。本研究は、選択性の高いリガンドを設計する従来の創薬プロセスとは異なり、副作用に反するオフターゲットに結合する薬物を設計することにより、副作用を軽減できる可能性を示唆しました。

ソース:Rational discovery of dual-indication multi-target PDE/Kinase inhibitor for precision anti-cancer therapy using structural systems pharmacology.

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うつ病のバイオマーカーを予測

オーストラリア・スウィンバーン工科大学 (2016年2月5日発表)

機械学習アルゴリズムを組み込んだデータマイニング技術は、精神医学にも適用されています。そうした中で、うつ病の診断バイオマーカーを特定することは、うつ病の診断に役立ち、さらに発症を回避できる可能性があります。

オーストラリアにあるスウィンバーン工科大学の研究者らは、全米健康栄養調査(2009–2010)のうつ病に関連する67の性別や年齢、病状などの特徴から、機械学習手法を用いて主要なバイオマーカーの特定を試みました。結果、3つのバイオマーカーとして分布幅、血清グルコースおよび総ビリルビンを特定しました。今後、疾患に関するビッグデータと機械学習を用いた分析により、うつ病だけでなく様々な疾患のバイオマーカーの特定が加速されていくでしょう。

ソース:Fusing Data Mining, Machine Learning and Traditional Statistics to Detect Biomarkers Associated with Depression.

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研究紹介は以上です。また次回をお楽しみに!

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masashi

投稿者の過去記事

大学院では薬学の研究を行っていました。主に創薬・製造・金融分野におけるAI活用を掘り下げたいと思います。Twitter:@masa05240112

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