最終更新日:2020/06/24
このコーナーでは、製造業向けAIの最新研究をお届けしていきます。サクッと業界のトレンドにキャッチアップしましょう!今回のトピックスは以下の5つです!
今週のラインナップ
1. 人工的な画像を使ってロボットを検知
2. 振動信号を振動画像に変換してCNNを適用
3. データプログラミングを用いた画像のラベリング
4. 顔認識で工場のスマート化
5. 機械学習による工場の負荷予測
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人工的な画像を使ってロボットを検知
乱雑な産業環境で撮影されたカラー画像からロボットの関節を検出することは困難な作業です。ロボットの外観は、関節の位置、部品の寸法、テクスチャリング、明るさ、および自己包接のために部分的に異なります。
これまでの研究では、ほとんどの場合、深度に富む入力データを扱ってきており、透視投影カメラによる深度の損失により、複雑な層が追加されます。
オーストラリアの研究チームは、深層畳み込みニューラルネットワーク(DCNN)を用いて、時間・空間的な情報を要する事なく、カラー画像中のロボット関節を効率的に検出する手法を提案しました。また、レンダリング画像を使用してラベル付きデータの不足に対処しました。
結果として、システムの予測精度は実画像に対する人間の判断に匹敵することが示されました。
元論文:Learning to Predict Robot Keypoints Using Artificially Generated Images
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振動信号を振動画像に変換してCNNを適用
軸受は回転機械の重要な部品です。軸受の故障は、生産計画、生産活動、さらには人的被害も及ぼしかねないため、ベアリングの故障診断を実現することは非常に重要です。また、どのように振動信号から特徴が抽出されるかを探求することは、従来の故障診断の性能に大きな影響を与えるだけでなく、様々な動作条件の下で再学習することなく良好な性能を達成するために重要です。
韓国の研究チームは、振動信号を振動画像に変換し、それを畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に利用して特徴量を学習することに焦点を当てました。深層学習アルゴリズムは、入力データから識別的特徴表現を効果的かつ正確に自動的に学習する能力を持っているため、従来のインテリジェントな故障診断の欠点を克服することができます。
1次元の信号を2次元の画像に変換して豊富な情報を得ることにより良好な結果が得られることが証明されました。
元論文:Convolutional Neural Network and 2-D Image Based Fault Diagnosis of Bearing without Retraining
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データプログラミングを用いた画像のラベリング
画像の機械学習が普及する中で深刻なボトルネックの1つは、学習に必要なラベル付けされたデータの確保です。この分野の最近のパラダイムであるデータプログラミングは、画像の構造化データとテキストの関係からラベルを生成する手法ですが、この画像の構造化データへの変換はデータプログラミングの適用性を制限していました。
韓国の研究チームは、クラウドソーシング、データオーグメンテーション、データプログラミング技術の組み合わせを用いて、大規模な画像を構造化データに変換することなく直接ラベリングすることで、データプログラミングの可能性を広げる手法を提案しました。
実際の産業用画像データセットを用いた実験の結果、この手法は最先端の技術よりも高い精度を得ることを示されました。
元論文:Inspector Gadget: A Data Programming-based Labeling System for Industrial Images
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顔認識で工場のスマート化
顔認識タスクにおける髪の色、笑顔、眉毛など画像に観察される特徴を属性とは呼びます。属性学習は、その一般化能力の高さから、ゼロショット画像検索、画像理解、視覚検索など様々な分野で広く利用されています。
中国の研究チームは、属性とセキュリティルールの一般化を考慮し、属性ベースの顔認識に基づく手法を提案しました。多属性顔認識モデルは微調整された残差ネットワーク(ResNet) を介して得られ、属性認識結果に応じて異なる判断を行うことで、ロボットをより賢くすることができます。
この技術は工場のスマート化に用いることで、工場の安全性の向上や、労働力への依存度が低下することが期待されます。
元論文:Attribute-based Face Recognition and Application in Safety Detection of Intelligent Factory
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機械学習による工場の負荷予測
負荷予測は、ピーク負荷管理、適量のエネルギー購入、需要応答など、エネルギーコスト削減のための制御スキームや対策の意思決定支援を可能にしますが、製造業では負荷予測のメリットが十分に活用されていないのが現状です。データの利用可能性が高まっていることを背景に、機械学習によってこれらのメリットが活用できることが期待されています。
ドイツの研究チームは、ダルムシュタット工科大学のETA研究工場の電気負荷の15分予測モデルを工場レベルで生成するための機械学習アプローチを提案しました。学習させたデータには、工作機械、建物の設備、建物自体、そして天候のような外的要因といった項目から1,554個の特徴量が含まれていました。
結果として、利用された機械学習アプローチはうまく作用し、負荷予測のユースケースに応じて、正確な短期負荷予測モデルを作成することが示されました。
元論文:Very short-term load forecasting on factory level – A machine learning approach
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