最終更新日:2020/02/12
暗号通貨市場は、他の金融市場と比べて歴史が浅いため、株やFXよりもチャートの変化が予測しづらい。近年、ビットコインや主要アルトコインの価格変動をSNS投稿から予測する戦略が有効であることが示され、多くの個人投資家、機関投資家がこの戦略を採用した。しかし、皆が揃って同様の戦略を取ったことにより、予測精度の低下を招く結果となった。
アメリカにあるダートマス大学のTianyu Ray Liら研究者は、ビットコイン・主要アルトコインの市場において、SNSデータを活用した価格予測の精度が悪化しているという点に着目し、この予測手法を、機関投資家がほとんど存在せず、個人投資家に支えられている小規模なアルトコイン(ZClassic)市場に適用させてみた。結果、0.81の相関関係が確認され、小規模なアルトコイン市場での価格予測には、未だTwitterなどのソーシャルメディアデータが強いシグナルとして使用できることが証明された。
小規模アルトコイン市場は、SNSを用いて価格変動予測できるか?
Tianyu Ray Liらの研究のポイントは以下の通りだ。
✔️ミッション ✔️解決手法 ✔️結果 |
その詳細を以下で述べる。
SNSを活用した価格予測の精度が悪化
近年、Twitterなどのソーシャルメディアデータから投資家の感情を分析し、ビットコイン市場およびその他の主要アルトコイン市場の価格変動を予測できることが示された。そのため、多くの個人投資家、機関投資家が感情分析に基づく価格予測戦略を採用した。結果、SNS上での投資家の感情と実際の価格変動の相関関係が弱くなり、予測精度の悪化を引き起こしている。
ターゲットを小規模アルトコイン市場へ変更
Tianyu Ray Liらは、時価総額が比較的小さなZClassicと呼ばれるアルトコインをターゲットに設定し、3.5週間にわたって1時間ごとに「ZClassic」、「ZCL」、「BTCP」のいずれかのワードを含むツイートを収集した(最終的に収集したツイート数は、重複を除くと130,000となった)。収集された各ツイートは自然言語処理を用い、-1~1の値を割り当てられ、ポジティブ、ニュートラル、ネガティブに分類された。また、リツイートされたツイートに対しては重み付けが行われた。集計されたデータを元に、XGBoostを用いた予測モデルが作成された。
高い相関関係が確認された
作成されたモデルから予測された価格は、実際のZClassicの価格と0.81の相関関係があることが確認された。このことからTwitterなどのソーシャルメディアデータが時価総額が小さい小規模アルトコイン市場において、価格変動を予測するための強力なシグナルとして利用できることが証明された。
研究紹介は以上だ。
Twitter以外にも、Googleの検索結果、Facebookの投稿、Redditの投稿など、他のSNSを活用することで、モデル改善が期待できるだろう。
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この記事で取り扱った論文:Tianyu Ray Li, Anup S. Chamrajnagar, Xander R. Fong, Nicholas R. Rizik, Feng Fu,”Sentiment-Based Prediction of Alternative Cryptocurrency Price Fluctuations Using Gradient Boosting Tree Model”,Front. Phys.-DOI
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