過剰な「いいね」中毒者、「私ってブスだよね」と言いながら自撮りをアップしまくる人、自分を不幸にするDV男に尽くしてしまう女性…
SNSの海を見渡せば、自尊心が低い人がごまんといる。自尊心とは、簡単に言えば「ありのままの自分を受け入れ、存在を肯定する心」のことだ。
強いコンプレックスがあったり、過去に虐待やいじめの経験があったりする人は、大人になっても自分自身を肯定できず、様々な悩みを抱えやすい。うつ症状、不安、希死念慮…自尊心の低さは生活の幸福度を下げ、生きづらさの原因となる。最悪の場合、自殺を招いてしまうことさえある。
心の苦しみは周りに見えづらく、周囲や社会が手を差し伸べることが容易ではない。
でも、AIならば――困っている人と支援者をつなぐ”かけはし”になれるかもしれない。
本特集では、AI時代のメンタリズムを、最近発表された論文をもとに解説していく。今回のテーマは「自尊心の低さを見抜く」だ。
2019年5月にアメリカの研究者らが発表した研究”Detecting Low Self-Esteem in Youths from Web Search Data“(日本語意訳:若者の自尊心の低さをウェブ検索データから発見する)では、「Googleの検索ワード履歴」から自尊心の低さを見抜くという斬新な方法を提案している。
自尊心の低い人は、Google検索の仕方にどんな特徴があるのだろうか?論文を紐解きながら見ていこう。
SNSの投稿からうつ病を発見する試み
メンタルヘルスの研究分野では、メンタルに問題のある人の早期発見が課題の一つであり、解決策の1つとしてSNSデータの活用が注目されてきた。
SNSは、個人の生々しいデータの宝庫であり、その人の本音や人柄を強く反映する書き込みも多い。読者の中にも、自分のプライベートなアカウントを会社の上司に見られては困る人がいるだろう。
研究者たちはこれまで、TwitterなどのSNSの投稿内容からうつ病や希死念慮のサインを見つける研究を数多く実施してきた。しかし、医療現場で診断ツールとして使えるほどの実用的なものを作ることはできていないのが現状である。
SNSの投稿は生々しいとはいえど、中にはキャラを作り込んでいる人もいれば、愚痴専用アカウントとして運営している人もいる。また、投稿するか否かを自分で検閲できるので、投稿者が公にしたくない情報は隠されてしまう場合がある。
SNSの投稿は、まだ”一枚皮を被った”データだったのだ。
検索履歴に自尊心の低さが表れる
もっと、人柄が素直に表れた、生々しいデータはないだろうか?
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