正解は「E．上記には当てはまらない」です。

人工知能の定義は決まっていません。逆に言えば、全ての選択肢が部分的に正解とも言えます。

なぜ定義できないのでしょうか。それは、知能・知性を定義できないためです。我々人間には知性があります（我々が知的だと感じる性質・振る舞いがヒトには備わっている、と言うべきでしょうか）。しかし、生まれたばかりの子どもには知性は無いように見えますし、その一方で犬や猫その他の動物が知的な振る舞いをすることもご存知でしょう。知性の有り様は多様で簡単には定義できません。それゆえ、人工知能も定義できないのです。

直接的に知性を定義することはできませんが、知性の存在を間接的に観測することは可能です。それがチューリングテストです。映画『イミテーション・ゲーム』の冒頭で主人公のアラン・チューリングが、刑事に対し知性について問いかけるシーンがあります（とは言え、チューリングテストを知るには映画『エクスマキナ』を見るべきです。『イミテーション・ゲーム』は暗号解読が主な話です）。チューリングテストでは、姿の見えない機械との会話を通し、相手が機械か人間かを判断します。チューリングは、機械の受け答えが人間と区別つかなければ、それは十分知的であると考えました。

チューリングテストはある種の知性を観測することができますが、やはり知性とは会話だけで定まるものではありません。人工知能の研究とは、翻って人間とは何かという問いなのです。

正解は「E．パソコンの性能が不十分だったため。」です。

一見、どれも正しく見えますが、第三次AIブームの必要条件はパソコンのスペックです。特に、GPU（Graphical Processing Unit）の進化とディープラーニングの進化は直結していると言って良いでしょう。

ディープラーニングは、機械学習の一手法であるニューラルネットワークの一種です。ニューラルネットワークでは、最終的な推測・分類に対して重要な要因（変数、パラメータ）は何か、その値はどれくらいかなどを機械が自動的に学習していきます。その計算量が膨大で、計算を終えるためには高いスペックが必要だったのです。

GPUは画像処理に特化したパーツです。計算を行う主体であるコアは、GPUには数千から数万個も搭載されています。そのため、膨大な計算を処理することができるのです。その一方で、パソコンの頭脳とも表現されるCPU（Central Processing Unit）は多くても数十個です。CPUは複雑な条件分岐を読み解く論理計算は得意で、確かに一般的な演算も早いです。しかし、GPUの圧倒的なコア数には敵いません。数人の天才よりも、数万人の凡才で計算した方が結果的に早いのです。

正解は「E．パーセプトロン」です。

パーセプトロンは、1958年にフランク・ローゼンブラット（Frank Rosenblatt）により発表されました。彼はアメリカの心理学者で、実際のプログラムとして形にしたのは、彼の高校時代の同級生であったマービン・ミンスキーでした。ちなみに、1958年というのはチキンラーメンが販売された年です。

パーセプトロンの前には、実はさらに原型となるアイデアが存在します。それが形式ニューロンです。これは1943年に発表されており、外科医でもあった神経生理学者ウォーレン・マカロックと数学者ウォルター・ピッツが提案しています。この形式ニューロンは、0か1の入出力を行うシンプルなもので、ローゼンブラットがこれを3層構造に配列し、パーセプトロンを構築しました。

誤解されやすいのですが、ディープラーニングは脳と同じ構造ではありませんし、脳の再現を目指しているわけではありません。原理的に神経細胞を模倣したアイデアがあるのみです。実際、小脳や視覚野とディープラーニングのモデルは似ていますが、あくまで抽象的に似ているに過ぎません。「摩擦のない平面」や「空気抵抗のない落下」など、ある目的のために現実から必要なものだけを抜き出したものが、形式ニューロンやパーセプトロンなのです。

正解は「D．ILSVRC」です。

Imagenet Large Scale Visual Recognition Challengeという大会が正解です。画像のどこに何が写っているのかという課題の正解率で勝負します。

それまでの大会では正解率が75%程度を推移していたのですが、2012年（第3回大会）トロント大学は2位に10%以上の差をつけて優勝しています。画像認識の猛者たちが、どうにか0.1%を向上させようとしている中での10%です。そのインパクトは計り知れなかったことでしょう。

それまでの主流はSVM（サポートベクターマシン）という手法が主流でした。これも機械学習の手法の1つで、現在でも画像認識の優れたモデルです。しかし、トロント大学はNN（ニューラルネットワーク）を用いて圧倒的な勝利を勝ち取ります。その結果、以降の大会ではNNが主流となり、2015年大会では人間の識別精度を超えるまでに至りました。2012年の優勝が第3次AIブームの要因のひとつであることは間違いないでしょう。