AIで「ブロックチェーン異常検出」する方法(AI×金融)【論文】

   

課題:ユーザーフレンドリーなブロックチェーン技術

ブロックチェーンは、ビットコイン(bitcoin)を代表するフィンテック(fintech)として注目されている技術です。しかし、データを台帳に保存する前のトランザクション署名プロセスに時間がかかってしまうことが、導入が進まない理由の一つだと考えられます。

また、セキュリティのへの対策も考慮しなければなりません。そこで、異常なトランザクションの検知を含めた、デジタル署名の自動化を実行し、処理を早めることができれば、ブロックチェーンの活用がより一層社会に受け入れられるようになるかもしれません。

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ブロックチェーンにおけるトランザクション署名の自動化という課題において、実際にどんな研究が行われているのでしょうか。スロベニアにあるマリボル大学のBlaž Podgorelecら研究者の発表を紹介します。

研究者らは、機械学習手法を導入することで、異常なトランザクション検出をしデジタル署名を自動化するモデルの構築を試みたのでした。

テーマ:機械学習による異常なトランザクションの検出

まずは Blaž Podgorelec らの研究におけるミッション・手法・結果をまとめました。

✔️ミッション
ブロックチェーンにおけるトランザクション署名プロセスを簡素化したい。

✔️解決手法
機械学習手法を用いて、異常なトランザクションの検出と同時にデジタル署名の自動化を試みた。

✔️結果
異常の視覚化に成功し、更にユーザフレンドリーなインタフェースの設計も行った。

ミッションから説明します。

目的:不正検出と同時にデジタル署名を自動化

ユーザーフレンドリーなブロックチェーン技術の活用には、デジタル署名プロセスの複雑さを解決する必要があります。一方で、トランザクションの悪意のある改ざんなど、セキュリティ面での対策も必要です。

近年では、ブロックチェーンネットワークでの不正検出の分野で機械学習の適用が試みられています。k-meansクラスタリングなどの教師なし学習が用いられ、不正なトランザクションの検出に成功しています。一方で、不正なトランザクションの検出と同時にデジタル署名の自動化を行うモデルは存在しません。

そこで、異常なトランザクションを検知しながら、それ以外のトランザクションのデジタル署名を自動化する機械学習モデルの構築に着目しました。

手法:トランザクション署名への機械学習の適用

Blaž Podgorelec は、機械学習手法を用いて、ブロックチェーンにおけるトランザクションへのデジタル署名の自動化および不正なトランザクション署名の検出を行いました。

従来の時系列データに対するRNN(recurrent artificial neural networks)アプローチの欠点は、モデルのトレーニングに大量のデータが必要であり、その結果、多くの時間がかかることでした。1つのアドレスのトランザクションデータは限られているため、少量のデータで機能し、モデルの構築にかかる時間が短い手法を使用する必要がありました。

データセット
本研究では、イーサリアムアドレスの2019年9月20日に行われたトランザクションから、ローリング ウィンドウ集計を利用し、時系列分析を行うための特徴量を抽出しました。具体的には、トランザクションの平均、中央値、標準偏差、合計、およびカウント(トランザクション数)を各時間(1秒、1分、1時間、1日、7日、14日、30日、60日、および90日)と組み合わせて、計45個の特徴量を抽出しました。

現在のトランザクション処理手順。

異常検出方法
次に、異常検出方法を使用して、異常検出モデルを構築し、各トランザクションを正常または異常のいずれかに評価しました。

トランザクションの間違い、エラー、または不正があったかどうかを正確に判断する方法はないため、結果は、視覚的な形式で提示されました。

結果:異常なトランザクションの視覚化

結果、異常なトランザクションを視覚的に分類し、検出することに成功しました。(赤が異常なトランザクション)

10個のイーサリアムアドレスの異常(赤いX)のあるトランザクションの検出結果。





また、本アプローチが有効であるかどうかを検証するため、個々のアドレスの重要な特徴量(トランザクションプロパティ)をランダムフォレスト分類アルゴリズムを用いて分析しました。結果、10個のイーサリアムアドレスすべてに普遍的で最も重要な時間枠がないことが示されました。つまり、各アドレストランザクションアクティビティのパターンに個別に適合させる必要があるということが示唆されました。

10個のアドレスすべての重要な時間枠。

以上のように、教師なし異常トランザクション検出は視覚化により、有望な結果を得られました。また、本モデルは、異常とラベル付けされたトランザクションが詐欺ではない場合でも、手動で署名するように求められるだけであるため、異常なトランザクションのみに手動で署名することで、デジタル署名プロセスの使いやすさが大幅に向上しよりユーザーフレンドリーなモデルとなりました。

研究紹介は以上です。

今後、ブロックチェーン技術の社会応用が広がっていくでしょう。


【ほかの記事もどうぞ】

この記事で取り扱った論文:Blaž Podgorelec, et al.,”A Machine Learning-Based Method for Automated Blockchain Transaction Signing Including Personalized Anomaly Detection”, Sensors 2020, 20(1), 147 – DOI





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masashi

投稿者の過去記事

大学院では薬学の研究を行っていました。主に創薬・製造・金融分野におけるAI活用を掘り下げたいと思います。Twitter:@masa05240112

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