AIを会社に入れてみたものの、一部の人が試しているだけで全社には広がらない。プロトタイプは動くのに、現場の業務にきちんと組み込もうとすると、決まって同じ場所で足が止まる。そんな経験を持つ読者は多いのではないでしょうか。
こうした実情を、立場の違うさまざまな会社への聞き取りから体系的に整理した調査を取り上げます。大手メーカー、中小の加工会社や受託組立業、AIを作っているスタートアップ、そして昔からの設計ツールを提供しているベンダーまで、現場の温度差を縦断的に拾い上げた内容です。

本記事では、この調査から見えてきた現場の実態と、そこから読み取れる実務上の判断材料を紹介します。
調査を行ったのは、MITのKristen M. Edwards氏たちの研究チームです。インタビュー相手の顔ぶれは多彩です。大手側には、NASAやGE傘下のエネルギー企業GE Vernovaが含まれます。中小企業からは、金属部品を削り出す精密加工会社Alloy Specialtiesや、電子基板の受託組立をしているSaunders Electronicsが入っています。AI開発側は、エージェント開発基盤を作っているLangChainなど。CAD/CAM/CAEベンダー側からは、AutodeskやPTC、Siemensが参加しました。CEO・CTOから現場エンジニアまで、会社の中の上下も縦断してデータが集められています。

エンジニアリングと製造業における主体的なAI:有用性、導入、課題、機会に関する業界の視点
Agentic AI in Engineering and Manufacturing: Industry Perspectives on Utility, Adoption, Challenges, and Opportunities
| 著者 | Kristen M. Edwards, Maxwell Bauer, Claire Jacquillat |
|---|---|
| URL | https://arxiv.org/abs/2604.09633 |
調査の方法は「半構造化インタビュー」と呼ばれるもので、あらかじめ聞きたい項目を決めつつ、相手の答えに応じて深掘りする形式です。得られた声からテーマを拾い上げて整理する、いわば現場の肌感覚をそのまま地図にしたような研究になっています。著者たち自身も、この研究は数字で代表性を証明するものではなく、現時点の実情を切り取った「スナップショット」だと明言しています。
なお本記事は論文の内容を日本語でかみ砕き、仕事で使える形に整理することを目的としています。論文に書かれている事実と、記事の書き手による補足は、文中で区別できるようにしています。
インタビュー先一覧
以下28社に対して実施されました。
大手エンジニアリング・製造業(6社)
| 企業名 | 概要 |
|---|---|
| NASA(米航空宇宙局) | 民間宇宙探査、航空学研究、宇宙科学を担う米政府機関。大規模なエンジニアリング・研究プログラムを運営 |
| GE Vernova | エネルギー領域の産業企業。発電、送電インフラ、エネルギー転換システム向けの技術とサービスを提供 |
| 匿名 | 半導体企業。産業用・車載・通信市場向けにアナログ、ミックスドシグナル、電源管理ICを設計・製造 |
| 匿名 | 主要防衛・航空宇宙コントラクター。通信、センシング、国家安全保障用途の先進システムを設計・製造 |
| 匿名 | 連邦政府出資の研究開発センター。国家安全保障宇宙プログラム向けの技術分析、エンジニアリング支援、システム評価を提供 |
| 匿名 | 防衛技術企業。軍事・セキュリティ用途の自律システム、センサー、ソフトウェア搭載ハードウェアプラットフォームを開発 |
中小エンジニアリング・製造業(14社)
| 企業名 | 概要 |
|---|---|
| Inkbit | アディティブマニュファクチャリング(3Dプリント)企業。複雑で機能的な部品向けのマルチマテリアル3Dプリント技術を手がける |
| Cyvl | インフラ技術企業。センサーデータ、コンピュータビジョン、分析を用いて公共向けの道路検査と資産マッピングを提供 |
| Alloy Specialties | 精密加工・サプライチェーンサービス企業。航空宇宙・防衛向けの複雑な機械加工部品と組立(タービンディスクやローター部品を含む)を提供 |
| Saunders Electronics | 契約製造業。プリント基板実装(PCBA)と電気機械システム統合に特化 |
| 匿名 | ロボット製造企業。医薬品の調剤・混合を自動化するシステムを開発 |
| 匿名 | ロボティクス・検査企業。自律システムとセンサーデータを用いて産業インフラを評価し、物理資産のデジタル表現を作成 |
| 匿名 | 防衛技術企業。センシングと信号処理技術など、国家安全保障向けの先進システムに注力 |
| 匿名 | 防衛・航空宇宙コントラクター。国家安全保障・抑止プログラム向けにシステムエンジニアリング、戦略兵器開発、放射線耐性マイクロエレクトロニクスを提供 |
| 匿名 | 防衛・民生ロボティクス企業。軍事・土木エンジニアリング向けの自律システムとソリューションを開発 |
| 匿名 | 宇宙技術企業。商用ロケット推進技術を開発 |
| 匿名 | 電子機器製造サービス(EMS)企業。PCB実装と関連生産サービスを提供 |
| 匿名 | 電子機器契約製造業。プリント基板実装とシステム統合に特化 |
| 匿名 | プリント基板メーカー。PCBの製造・実装サービスを提供 |
| 匿名 | 航空宇宙・防衛・産業顧客向けのプリント基板メーカー |
AI開発企業(5社)
| 企業名 | 概要 |
|---|---|
| LangChain | 大規模言語モデルを用いたアプリケーション構築用のオープンソースフレームワークおよび商用プラットフォームを開発。エージェントのオーケストレーション、ツール統合、可観測性などを扱う |
| C3 AI | エネルギー、防衛、製造、物流など向けにAIアプリケーションと開発プラットフォームを提供するエンタープライズソフトウェア企業 |
| Synera | 機械エンジニアリング向けの自動化プラットフォームを提供。ローコードおよびAPIベースのアプローチでCAD、CAE、シミュレーションツールを統合 |
| AllSpice | 電気エンジニアリングチーム向けの協業・設計レビューソフトウェアを提供。回路図・PCB設計の自動チェックとレビュー機能を備える |
| 匿名 | 基盤モデル開発企業。オンデバイス・エッジ環境を含む効率的なデプロイに対応したモデルを手がける |
CAD/CAM/CAE開発企業(3社)
| 企業名 | 概要 |
|---|---|
| Autodesk | 建築、エンジニアリング、建設、製造、メディアなど向けのソフトウェア製品・サービス開発企業。3D設計ソフトの例としてAutoCADやAutodesk Inventorがある |
| PTC(Parametric Technology Corporation) | 製品ライフサイクル管理(PLM)、CAD、産業ソフトウェアツールを開発。製品設計、エンジニアリング、製造プロセスの管理を支援 |
| Siemens | 産業オートメーション、デジタルエンジニアリングソフトウェア、エネルギーシステム、製造技術を幅広く手がけるグローバル技術企業 |
いま本当に使えているタスクは、大きく3種類
繰り返しが多くて形が決まっている作業ではすでに有効
インタビューで最初にはっきりしたのは、「形が決まっていて、数が多い作業」でAIがすでに役立っているという話です。ある大手防衛関連企業のマネージャーは、50ページから1000ページにもなる要求仕様書を読み解く作業を例に挙げていました。仕様書に書かれた項目を一つひとつ、機械・電気・ソフトウェアの設計にどう影響するかマッピングしていく地道な仕事です。こういう作業をAIで下書きしてもらえるだけでも、大きな時短になります。
電子基板の受託組立を行っている契約製造業では、話を聞いた5社のうち4社が、データ入力や社内システムへの登録を自動化する小さなツールを自前で作っていました。ただ「作った本人が辞めてしまって、誰も中身を直せない」という声もあり、一人の職人芸で止まらないように基盤化することが次の宿題になっています。
文書を探して読んで要約する仕事が、想像以上に多くの時間を食っている
NASAのあるエンジニアは、ある案件で「自分の作業時間の4分の1を、文書作成とレビュー、規則の順守チェック、報告書作成に使っていた」と話しています。過去の設計データや試験結果、不具合の記録は山のようにあるのに、探しづらくて読みづらい。ここをAIに任せられれば効果が大きい、というのは多くの会社に共通する感覚でした。
論文はマッキンゼーの別の調査も紹介しています。それによると、データの置き場所が整理されていない会社では、従業員は就業時間の3〜4割をデータ探しに使っているといいます。さらに2〜3割は、誤記や表記ゆれを直すといったデータの掃除に消えるそうです。合わせると、1日のうち半分以上が資料整理で消えている計算になります。
単発の自動化より、仕事の段取りを丸ごと任せるほうに価値がある
もう一歩進んだ使い方として注目されているのが、複数のAIエージェントに仕事を分担させて、まとめ役のエージェントが全体の段取りを見るやり方です。LangChainのエンジニアは、調査や分析の仕事をこの形で動かしているお客さんの例を紹介していました。単発で1つの作業を速くするよりも、いくつかの作業を束ねた業務プロセス全体をAIに流し込むほうが、効果が大きくなりつつあるということです。
一番のつまずきはAIの賢さではなく、データの状態だった
「問題はAIツールじゃない。データのほうだ」
Alloy SpecialtiesのCEOがインタビューで口にしたこの言葉。調査全体を象徴しています。CAD大手PTCの幹部も「うちが付き合っている会社のほとんどは、自前のAIモデルを作れるほどのデータを持っていない」と話していました。AIの性能を気にする前に、そもそも食べさせるデータが足りない、あるいは整っていないのです。
決まりごとが厳しすぎて、クラウドのAIが使えない
航空宇宙や防衛に近い業界では、データの扱いに非常に厳しいルールがあります。たとえばITAR(アメリカの武器関連品目の輸出管理規則)や、米国防総省が求めるサイバーセキュリティの認証などです。ある防衛関連企業のマネージャーはこんな運用を話していました。リムーバブルHDDを金庫に保管して、外部のネットワークから完全に切り離された環境で作業している、というのです。こうした会社では、ChatGPTのような便利なクラウドAIは、そもそも入口で使えません。自社サーバーの中や、機械に組み込む形でAIを動かす必要が出てきます。
同じ会社の中で、データが26ヶ所にばらばらに置かれていた
ある大企業のエンジニアは、社内の22人の専門家に聞き取りをしたところ、26種類のデータ置き場が見つかったそうです。保存場所は個人のパソコン、SharePoint(社内の共有フォルダのようなもの)、独自のデータベース、ファイルサーバーとばらばらでした。その結果、過去の設計を探すのに数週間から数ヶ月かかることも珍しくないといいます。データがどこにあるかは、それを作った本人の頭の中にしか地図がない。

仕様書はPDFに閉じ込められていて、AIが直接読めない
AllSpiceという電子設計ツールの会社の幹部は、「エンジニアリングの世界の情報は、ものすごく多くがPDFに閉じ込められている」と話していました。部品の品質条件、寸法の許容差、製造時の注意書きなどがPDFに散らばっていて、AIがそのまま理解できる形になっていません。しかもCADで図面を更新しても、PDF側には自動で反映されないので、古いPDFと新しい図面が同時に存在していたりします。
熟練職人の引退が目の前に迫っている
Inkbitという3Dプリント技術の会社のCTOは、「うちの技術に関する細かいコツの多くは、従業員の頭の中にある」と話していました。Alloy SpecialtiesのCEOはさらに踏み込んで、「中小の加工業の従業員の平均年齢は55歳ぐらい、経営者は60代。大量引退の崖っぷちに立っている」と警告しています。難しい形の部品をどう削るか、といった職人の勘は、文字にされないまま失われる危険が目の前まで来ています。
信頼と決裁ルールは後回しにできない
人間がチェックする仕組みは、当面は無くせない
ほとんどのインタビュー相手が、安全に関わる仕事ではAIを補助役にとどめていると答えていました。AllSpiceのCTOは「ハードウェア設計のチームには今でも人間のチェックが入っている。ツールに100%頼っているわけではない」と話しています。PTCの幹部も「最終的に決めるのはエンジニア。AIはわかりやすく提案をするだけ」と言い切っていました。
「同じ入力で同じ答え」に慣れた文化と、確率で答えるAIは合いにくい
ある防衛ロボット企業のエンジニアは、こんな話をしていました。「今のソフトウェアは、同じ入力を入れれば必ず同じ結果が返ってくる。だから不具合が起きても、どの行のコードが原因か突き止められる。でもAIはブラックボックスだから、なぜ間違えたのかを調べるのがすごく難しい」。エンジニアリングの世界は、同じことをやれば同じ結果になる、という前提の上に何十年もかけて品質管理の仕組みを作ってきました。確率で答えるAIは、その前提を根本から揺さぶってしまうのです。
現実的な答えは「2つを組み合わせる」やり方
Autodeskのあるベテランエンジニアは、「安全に関わる情報はナレッジグラフ(整理された知識の辞書のようなもの)に入れておいて、毎回同じ方法で取り出す。AIが勝手に答えを作る余地を残さない」と説明していました。確実に答えが欲しいところは昔ながらの方式で、柔軟さが欲しいところはAIで、というふうに役割を分ける設計です。AllSpiceも、一般的なエンジニアリングの知識は大きなAIモデルから、社内限定の情報は隔離した環境から、別々のルートで供給する作りになっていました。
既存のチェック体制にAIを差し込むのが一番早い
NASAのエンジニアは、「うちにはもともとPDR、CDR、TRR(設計や試験の節目に行う公式な審査のこと)という仕組みがある。AIが来たからといって、これを捨てる理由はない」と話していました。そのうえで「エージェントの時代になると、AIのチェックと人間のチェックを両方増やす必要が出てくるかもしれない」と付け加えています。新しい承認ルールをゼロから作るより、すでにある審査の流れにAIの出力を乗せるほうが、現場の抵抗も少なく、安全も保ちやすい、というのが共通した答えでした。
技術より先に、組織と人の壁が立ちはだかる
「使える人」と「作れる人」の差が競争力に
ある中堅エンジニアリング企業の役員は、「AIを使える人はたくさんいる。でも、自分で組み立てたり作り直したりできる人はほんの一握りだ」と話していました。ChatGPTに質問するだけのレベルと、業務の流れにAIを組み込むことができるレベルの間には、実はかなり大きな溝があります。この溝を越えられる人が社内にいるかどうかが、企業の競争力に直結しつつあります。
社内の温度差が極端に開いてしまう
AIを巡る社員の反応は3つのタイプに分かれます。
- 何でも解決してくれると思い込む「熱狂派」
- 一度失敗したら二度と使わない「懐疑派」
- 限界を理解したうえで上手に使い分ける「実利派」
です。一番価値を出せるのは実利派ですが、多くの会社では両極に寄りがちで、熱狂派は使いすぎてミスを招き、懐疑派は使わずに機会を逃す、という状況が起きています。NASAの社内向けAI基盤には6,000人以上が登録しているそうですが、それでも「現場の深いところにいる人にはなかなか届かない」という声がありました。
経営層が自分で触っているかどうかで結果が変わる
NASAのエンジニアは、はっきりこう言っていました。「CEO自身がAIを触っている会社ほど普及している。そうでない会社では、AIはただの気晴らしかリスクとしか見られない」。トップが体で価値を理解していないと、予算もルールづくりも中途半端になる、という話です。
設計ツール側の準備が追いついていない
昔からのCADソフトは、AIから操作される前提で作られていない
あるリサーチエンジニアは「90年代からPro Engineer(昔からある設計ソフト)を使い続けている。ツールを替えるのは本当に大変だ」と話していました。認証や社内マニュアル、蓄積されたデータが特定のソフトに紐づいているので、簡単に乗り換えられません。そしてその古いソフトには、AIが外から操作するための窓口(API)がないことが多いのです。
AIの進化スピードと、設計ソフトの更新スピードが合っていない
設計自動化ツールを提供するSyneraのAI責任者は、「AIの進化と、エンジニアリングツールの進化のスピードが合っていない。差が大きく開いている」と話していました。多くのCADやCAE(構造や熱を計算する解析ソフト)は、画面を操作する前提で作られていて、プログラムから動かすことを想定していません。AIとツールをつなぐ共通の規格を作ろうとする動きもありますが、業界全体に広がるのはまだ先になりそうです。
3次元の空間を理解させるのは、今のAIにはまだ難しい
同じSyneraのAI責任者は「設計の理解と空間の理解は欠かせない。部品は一つだけで存在するのではなく、必ず全体の一部なのだから」と話していました。今のAIは文章やソースコードには強い一方、3次元の形や、部品同士の組み合わせ、熱や電気や力が絡み合う現象を扱うのはまだ苦手です。さらに「設計データは1つ作るのにかかる時間がソースコードよりずっと長い」とも話しています。AIに学ばせるデータそのものが集まりにくい、という別の壁もここから出てきます。
製造業でのAI導入のポイント
今回の半構造的インタビューの結果から以下のような点が言えます。
最初の投資は「数が多くて形が決まった作業」に絞る
要求仕様書の読み取り、部品表の比較、PDFからの仕様抽出、電子回路のプリチェック。この手の作業なら、今のAIでも十分に効果が出ます。まずはここから始めて、社内に成功体験を作ると次の一歩が踏み出しやすくなります。
データ整理は、AI導入より先にやっておく価値がある
調査が繰り返し示しているのは、多くの会社で最大の問題はAIツールではなく、「どこに何のデータがあるかわからない」という状態だ、ということです。データの置き場所を統合する、命名ルールをそろえる、熟練者の頭にある知識を書き出す。こうした地味な作業は、AIを入れる前の準備として計画に入れておく価値があります。
クラウド以外の選択肢を最初から検討しておく
自社サーバーで動かす、機械に組み込む、外部から完全に切り離す。こういう選択肢が必要になるのは、防衛や航空宇宙だけではありません。自社の技術情報を外に出したくない普通の会社にも、同じ話は起きます。AIを選ぶときに「クラウドでしか動かないもの」だけを候補にすると、あとで選択肢を失うことがあります。
AIを「もう一人のメンバー」として、既存の承認フローに差し込む
新しいルールを一から作るより、今ある設計審査や試験審査の中にAIの出力を流し込むほうが、移行の手間も組織の反発も少なくて済みます。
経営層が週に一度はAIに触れる時間を作る
CEOや役員が自分で触っているかどうかで、普及のスピードが目に見えて変わると複数の事例が示しています。経営層が実際に手を動かす時間を仕組みとして確保するのは、案外効果の大きい投資です。
3次元の空間や複雑な物理現象が絡む仕事には、今は期待しすぎない
3Dの設計理解や、熱・電気・力が絡み合う問題をAIだけで解かせるのは、まだ研究段階の話です。当面は、従来の専門ソフトとAIを組み合わせて使うのが現実的な答えになります。
まとめ
この調査がはっきり示しているのは、AIエージェントの導入は「ソフトを買って入れる」話ではない、ということです。AIモデルの性能はどんどん上がっています。それでも現場で詰まる場所は今もずっと、データの整理具合、古いツールとの相性、チェックの仕組み、社内のルール、そして人の知識レベル、といった周辺部分にあります。著者たちが強調しているのは、これらはどれも解決できる問題である一方、簡単でもすぐにでも解けないという点。
逆に言えば、地道なデータ整理、API整備、検証プロセスの設計、社員のAI知識の底上げといった「地味な投資」を先に済ませた会社が、そのままAI活用の先頭を走ることになります。AIを入れるという決断は、ツール選びではなく、会社の作り直しに近い話だという視点が、この調査から強く浮かび上がってきます。
なお、この研究は数字で何かを証明するタイプの調査ではなく、定性的な聞き取り調査です。著者たち自身も、この結果は「現時点の実情のスナップショット」として読んでほしいと書いています。一般化しすぎず、現場で共通して語られているパターンを知るための素材として受け取るのが良さそうです。
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