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ソフトバンク決算から見る国内AIビジネスの動向と人材像【コラム】

   

本記事は、AI業界の最新動向に関心を持つ方々、さらにはキャリア形成や転職を検討しているAI人材や、そうした人材を採用したい企業の採用担当者を主な読者と想定しています。

書き手はAIDBの経済調査チームです。普段の論文解説記事では主に科学技術の進展を研究ベースで扱っていますが、本コラムは経済的価値への転換を事業ベースで追跡します。

今回は、通信インフラを強みに持つソフトバンクのAI戦略にスポットライトを当てます。企業公式情報をもとに、ソフトバンクがAIに注力する理由、そしてAI人材や採用担当者にとってどのような可能性が開かれるのかを整理しました。

皆さんのキャリア・採用戦略の一助とすることが本記事の狙いです。将来的に「AI人材として新たなプロジェクトに挑戦したい」「企業の競争力を高めるために優秀なAIエンジニアを迎えたい」と考えている方々にとって、ソフトバンクの取り組みは見逃せない事例となるかと思います。

ソフトバンクのAI戦略

ソフトバンクは、2025年3月期 第3四半期において、連結上期累計で売上高4兆8,115億円(前年同期比+7%)、営業利益8,219億円(前年同期比+12%) を達成し、増収増益の基調を維持しています。各事業セグメントを見ても、ソフトバンクが伝統的な事業領域であるコンシューマ(モバイル売上高増収反転やスマホ契約数増)はもちろん、エンタープライズ(DX需要増)などが好調で、AIサーバー販売を含むディストリビューション部門の拡大も見られます。

新たな取り組み

ソフトバンクが掲げる「ソフトバンク AI 戦略」の特徴は、通信キャリアとしての強みを背景に、通信インフラと大規模計算基盤を武器に事業領域を拡張している点です。具体的には、NVIDIAとの協業により 5G と AI を統合した新しい通信ネットワーク AI-RAN(Artificial Intelligence Radio Access Network)を開発し、ネットワーク運用の効率化・高度化を目指しており、このAI-RANを製品化した統合ソリューション「AITRAS(アイトラス)」が発表されました。

また、AIデータセンターの構築に向け、大阪府堺市にあるシャープ株式会社の液晶パネル工場関連の土地や建物を約1,000億円で取得する決議が報告されています。

さらに、 OpenAIとのパートナーシップから生まれた企業向け最先端AI「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」の大規模導入や、全グループ会社への ChatGPT Enterpriseなどの既存ツールの展開など、事業創造や横展開が非常にダイナミックです。また、OpenAI およびソフトバンクグループは、日本企業特有のニーズに対応したAIエージェントの導入を促進するとともに、グローバル規模でのモデルを構築することを目的に合弁会社「SB OpenAI Japan」を設立したことも注目を浴びています。

求められる人材像を分析

ここまでソフトバンクのAI戦略を資料ベースで見てきましたが、このような業界においては、どのような人材が求められるのでしょうか。以下では、企業文化的な側面とスキル的な側面から、編集部が独自に分析した結果をご紹介します。

企業文化的な側面

企業文化的な側面では、まず、最先端のAI技術に対する深い専門性が求められます。中でも、大規模なデータやディープラーニングを駆使して未解決の課題に挑戦し、解決に導く高度な実装力や研究能力が歓迎されます。

また、イノベーションへの強い意欲と問題解決能力も重要で、既存の事業モデルを革新するようなアイデアを積極的に提案できる人材が期待されています。さらに、ソフトバンクのような企業で行われるプロジェクトの多くはソフトウェアとハードウェアの融合が特徴であるため、異なる専門領域を持つメンバーと協力し合えるクロスファンクショナルなコミュニケーション能力も求められています。

そして、AI業界は日進月歩で技術が進化するため、継続的な学習意欲を持ち、自発的に新しい技術を吸収しながら情報発信を積極的に行える人材が評価されると考えられます。

スキル的な側面

スキル的な側面に目を向けると、ソフトバンクのような企業ではクラウド環境をベースにした大規模分散学習を前提とする開発スタイルが重視されています。そのため、「プラットフォーム志向」の開発スキルを持つエンジニアが活躍できる環境です。

また、AIの重点領域として大規模生成AI、通信インフラとの連携、そしてSaaSソリューションの開発が挙げられ、これらの分野に精通している人材は特に需要があります。さらに、膨大なデータをクラウド上でスケールして活用する技術やノウハウも不可欠です。

キャリアの観点では、新規事業の立ち上げやグループ会社間での横断的な活躍が多く、将来的には事業責任者への道も拓けているのが特徴です。

求められるスキルの詳細分析

最先端のディープラーニング技術

ソフトバンクのAI戦略を踏まえると、こうした業界ではLLMの構築やチューニング手法に関する深い理解が求められていると考えられます。Transformerアーキテクチャや分散学習に関する知識が重要になるでしょう。

また、AIの運用環境ごとに最適化の方向性が異なることから、ソフトバンクのようなクラウドベースのシステムでは、大規模な分散処理の知識が特に重要と分析しています。

MLOps / データエンジニアリング

機械学習の開発から運用までをスムーズに進めるために、MLOps(機械学習オペレーション)の知識が不可欠であると思われます。また、モデルの開発・デプロイ・運用を自動化し、継続的な改善を実現するパイプライン構築のスキルが求められていると見られます。

また、大規模データの効率的な処理を行うためのETL(Extract, Transform, Load)プロセスの構築や管理経験もデータエンジニアリング分野では重要になるでしょう。

プライバシー・セキュリティ設計

AIの活用が進むにつれてデータのプライバシーやセキュリティ対策が非常に重要な課題となっています。差分プライバシーやFederated Learning(連合学習)、暗号化プロトコルなどの技術を活用し、安全なデータ処理環境を設計できるスキルが重要になると考えられます。

なお、日本企業の特徴も考慮すると、安全性の確保はより強く求められると見ています。

ビジネスセンス・コミュニケーション力

AIを活用した新規事業の開発や他部門との連携が重要な環境では、技術力に加えてビジネス視点での提案力やコミュニケーション能力が求められると考えられます。技術とビジネスをつなぐことができる人材が重要な役割を果たす可能性が高いです。

まとめ

ソフトバンクのAI戦略を例に見ても、AIは今後も各産業に大きなインパクトを与える中核技術であり、企業間の競争は激しさを増しています。また、Googleや Amazon、Meta、Microsoftなどの他のGAFA系企業や国内大手IT企業でも似た潮流が見られます。

AI業界へ飛び込もうとするエンジニアや、AI人材の確保を目指す採用担当者にとって、最新トレンドを把握しつつ、自身や自社がどの領域で活躍できるかを考えることは重要かと思います。

また、AI業界での転職やキャリアアップ、AI人材の採用やプロジェクトの立ち上げに興味がある方は、当社が運営するAIDB HRといったプラットフォームを参考にしていただければと思います。

AIDB HRはこちら:https://parks-inc.com/aidb-hr

AIがもたらす大きな変革期だからこそ、自分の強みや関心分野を改めて整理し、新しいステージに進む絶好の機会と捉えてみてはいかがでしょうか。

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