最終更新日:2025/03/07
はじめに
本記事では、AI業界の最新動向に関心を持つ方々、とりわけキャリア形成や転職を検討しているAI人材や、そうした人材を採用したい企業の採用担当者を主な読者と想定しています。
書き手はAIDBの経済調査チームです。普段の論文解説記事では主に科学技術の進展を研究ベースで扱っていますが、本コラムは経済的価値への転換を事業ベースで追跡します。
最近、大規模言語モデル(LLM)の普及は急速に進み、ChatGPTの登場をきっかけに海外企業が先行している印象が強まっているかもしれません。しかし、日本国内でも豊富なデータや技術基盤を活かし、ユニークな強みを持つLLMを開発する企業が増えています。
今回は、通信インフラを強みに持つNTTが開発する国産LLM「tsuzumi」にスポットライトを当てます。企業公式情報をもとに、最新の決算を踏まえたNTTの研究開発投資の動向や、AI人材・採用担当者にとってどのような可能性が広がるかを整理しました。
最新決算から見るNTTの戦略
2024年度第3四半期決算(2024年4月1日~12月31日)によると、NTTの営業収益は前年同期比3.4%増の10兆497億円でした。しかし、営業利益は前年同期比5.9%減の1兆3,992億円、純利益も15.9%減の8,506億円と利益面では課題も浮き彫りになっています。

事業別では総合ICT事業が微増、グローバル・ソリューション事業が7.3%増と好調である一方、地域通信事業はやや減収となっています。NTTが積極的に推進しているのは、AIやDXを軸にしたグローバル事業の強化であり、今後も通信×AIの融合による新サービス創出を推進していく方針です。

出典:https://group.ntt/jp/ir/library/
研究開発投資の状況と「tsuzumi」の展望
決算資料でも、NTTは引き続きAIおよびDX領域への投資を強調しており、特に国産LLM「tsuzumi」に代表されるAIソリューション開発に注力しています。
「tsuzumi」は日本語特有の敬語表現や文脈理解への対応力を強化し、オンプレミス運用可能な設計を採用しています。クラウド利用が難しい医療、金融、コールセンターなどにおける高いセキュリティ要件を満たす運用が期待されています。
NTTはこの国産LLMを5G・6Gの次世代通信ネットワークやクラウド基盤と連携させ、リアルタイムかつセキュアなデータ分析を可能にする構想を進めています。グループ会社のNTTデータや海外企業とのオープンイノベーションも進めており、国内外での実証事例を積極的に増やしています。
人材需要への影響と採用市場の動向
こうしたNTTの動きはAIエンジニアやデータサイエンティストにとっても新たなチャンスとなります。特にオンプレ環境での高度なセキュリティ知識やネットワーク運用経験を持つエンジニアの需要は、今後さらに拡大するでしょう。また、NTTがグローバル案件の比重を高めているため、英語によるコミュニケーション能力や国際的な法規制に対する理解力も重要となります。
採用担当者にとっては、通信・ネットワークとAI双方に詳しい人材の確保がより重要になるでしょう。NTTのtsuzumiを活用したプロジェクトが進むにつれて、特に通信インフラを前提としたAIソリューションを推進できる技術者やプロジェクトマネージャーへのニーズが高まる見込みです。
まとめ
NTTが進める国産LLM「tsuzumi」は、通信インフラの強みを活かし、高精度な日本語処理とオンプレミス対応を兼ね備えたAIモデルとして国内外での展開を目指しています。今回の決算でも引き続きAI投資を強化していることが示されており、今後さらに実用化が進むことで、AI人材市場にも新たな可能性が生まれるでしょう。
AI分野でのキャリア構築や、AI人材の採用を検討している方々にとって、NTTをはじめとした国内の動向は引き続き注目すべきトピックです。AI業界へのキャリアアップを目指す方は、投資を加速する企業の求人情報やプロジェクト情報に今後も注意を払うことをお勧めします。
また、AIDBでは人材と企業の適切なマッチングを支援します。AI分野での就職や転職、または案件獲得を目指される方(または興味関心がある方)は以下をご覧ください。
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